8-6
――3分後。
「バトルリプレイ、両者セット!」
小休止が終わると、再びトモと足利の試合が始まる。
しかし、この試合は誰も予想しないとんでもない結果になる。
「……RPS GO!」
…………
……
「ドロー、10カウントにつき、3分の休憩を設ける」
「「おいおい、またかよー」」「「全く決まらないな」」
トモと足利は互いに同じ手を出して、再び連続10回のあいことなる。そして3分間の休憩となった。
「ハァハァ、足利先輩の強運は半端じゃない」
「ハァハァ、俺が負けるわけがないんだ、ハァハァ……」
試合での緊張感といつもより長い試合時間。トモも足利も、お互いに疲れが溜まってきた。
「バトルリプレイ、両者セット!」
その声で再びバトルスペースに上がったトモと足利だが、足利の様子がおかしい。
足元が千鳥足のようにフラフラ動いていて。頭も微妙に前後に揺れている。
「……RPS GO!」
その時、足利は右手だけではなく、体全体がグーッと前に動いた。
「危ない!」
トモが足利の両肩を掴んで体を支えた。
高木先生もよろける足利の体を支えながら、審判を下した。
「エリミネート、青、足利。レッド」
そして青の電光掲示板に「Eliminate」という文字が映し出される。
「ハァ、ハァ……待ってくれ!おれはまだ戦える!」
足利はフラフラした体で高木先生に訴えるが、高木先生は顔を左右に振って断る。
「今の足利くんには無理です。勝負は決まりました。勝者、白、天樹友助、準決勝進出です!」
その結果に、足利の体は床に崩れ落ちた。
「くそっ!俺の運もここまでかっ!」
「それは違います。足利先輩」
「――お前ッ」
「先輩は運ではなく体力が尽きたんです。運に任せるだけではなく、体力もつけていたなら、負けていたのは僕の方だったかもしれません」
その言葉に対し、足利は口の両端を吊り上げながら答える。
「フッ、そうだな。その通りだよ」
トモはその言葉を聞くと、起き上がろうとする足利の体を支える。足利が立ち上がったところで、高木先生がその場を仕切った。
「試合終了、両者、礼!」
「お前と試合が出来て良かった。ありがとうな」
「足利先輩……こちらこそ、ありがとうございました!」
トモはそう言うと、足利に深く頭を下げる。そして足利もトモに頭を下げると制服に着替える為、更衣室へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「トモ、お疲れー」
「これ、スポーツドリンクよ」
「ありがとう、喉が渇いて倒れそうだよ」
トモはミクから貰ったペットボトルのスポーツドリンクをゴクゴクと飲んだ。
額や首から出ている汗が、試合の過酷さを物語っていた。
「最終決戦になってくると簡単に勝たせて貰えないね」
「まあ、簡単に勝ったら生徒会長の威厳ないもんな」
スポーツドリンクを飲みきったところで、ため息をつきながらそう話すトモ。
この『PRS BATTLE』で頂点に立てるのは男子、女子それぞれ1名ずつ。皆、全力で戦っているんだ。
「第4試合に出場する道中と三上は防具マスクを着けます」
宮元先生から声が掛かった。
「「ユウ、頑張って」」
「おう、行ってくるぜ!」
俺はトモとミクに軽く手を振るとバトルスペースのすぐ下にいる藤原先生と二宮先生の側に向かう。
そして防具マスクを着けてもらうと、最後の身体検査を受けた。