8-4
「ヒット、攻撃成功!勝者、青、横関歩美。準決勝進出!」オォォォォッ
「今金香織、時実未来、防具マスクを着けます」
「「はい」」
第3試合の決着が付いた途端、次の試合に出る今金とミクが先生に呼ばれる。
今金とミクは椅子から立ち上がりバトルスペースに向かう。
「ミク、勝てよ!」
「ありがとうユウ」
ミクは緊張しているのか、笑顔がきごちないない。
「ミクちゃん、応援しているよ頑張って!」
「うん、ありがとうトモ、行ってくるね!」
トモの声援にいつもの笑顔になったミクは軽く手を振りながら、マスクを着けるため藤原先生のところへ行った。
フーッ、これでミクも落ち着いて試合ができるな。
「そういえばユウ、右目は大丈夫?」
「あー、ヘアピンで前髪上げたら痛くなくなったわ」
「そっか、気をつけないと視力低下とかするから気をつけて」
親身になって心配するトモには悪いことをしたけど、西郷の思うとおりにさせるもんか。
ミクに勝ちたいなら正々堂々と勝負しやがれっ!
離れた距離にいるが、俺と西郷はしばらく睨み合っていた。
「第4試合、白、1年B組、今金香織。青、1年D組、時実未来。前へ」
「「時実さん頑張れ!」」「「時実さん負けるな!!」」「「勝ってぇ!時実」」
主審の高木先生の声で防具マスクを着けた今金とミクがバトルスペースに上がると、観客席から大きな声援が上がった。
なんだろう、このアイドルを応援するような熱気。
「相変わらず人気者だねミクちゃん」
「ここまでくるとスゲーよな……」
選手控え席でミクを応援している俺とトモは引き気味になってきた。
「観客は静粛に!」
主審の高木先生の声にミクは姿勢を正す。
その時、今朝のユメとの会話がミクの頭の中をよぎった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『ユメ、早く学校に行きなさい。何をしてるの?』
『今日のラッキーアイテムをランドセルに入れるんですぅ』
ユメはいつも朝見ている占い番組を楽しみにしている。
ちなみにユメもミクも同じ乙女座なので、占い結果は一緒だ。
『ラッキーアイテム?それが?』
『そうですぅ、いいことがあるんですぅ』
『フフッ、良い事があるといいわねユメ……』
『お姉ちゃんも、持って行くといいですぅ』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その時、高木先生の声が飛んできた。
「……両者セット!……RPS GO!」
『今日のラッキーアイテムはこれよっ!』
ミクは自分の右手を素早く前に出す。
ミクの右手はチョキ。今金の右手はパー。
青スペースのミクの電光掲示板に「Attack」と点灯された。
ユメが言っていたラッキーアイテムは「はさみ」だったのだ。
『えっ?』
ミクが驚くのも無理はない。ミクは生まれて初めて1回目のジャンケンで勝ったのだ。
『うそ、私の攻撃だわ!』
ミクは素早く左腕を今金の方に伸ばす。
逆にミクが勝つと思っていなかった今金は動揺して体勢が崩れている。
ミクの左ストレートが今金の鳩尾に入った瞬間、ブーッと鳴る機械音と、
青、ミクの電光掲示板に「Hit!!!」の文字が光る!
結果を見た、主審の高木先生が右手を高く上げて、大きな声を上げる。
「ヒット、攻撃成功!勝者、青、時実未来!準決勝進出!」
「「時実さんおめでとー!」」「「生徒会長になれよ!」」「「頑張れ!!」」
ミクを祝福する、耳を塞ぎたくなるくらいの大声援が巻き起こる。
ミクが優勝して女子生徒会長になったら、応援で体育館が壊れるんじゃね?
そんな俺の心配をよそに、ミクの試合が終わったところで一旦休憩なった。