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「1年A組、全員着席、1年B組、全員着席、1年C組、全員着席…………3年D組、全員着席。以上生徒全員の着席を確認しました」
先生方と生徒会役員は、体育館に入場した生徒をチェックしていった。
これも、『PRS BATTLE』で不正などが行われないようにするためらしい。
全ての確認作業が終わったところで、塩花教頭先生が体育館中央に作られた特設バトルブースの上に上がる。
「それではこれより『PRS BATTLE全体選抜予選』を行います。試合中は静粛に。モノを投げたり、暴言を吐いた場合、厳しく処罰します」
そう挨拶をすると、ブースからゆっくりと下りて行った。
教頭と入れ替わるように壇上に上がったのは3年D組の担任で数学を教えている高木貞夫先生と、3年C組の担任で理科を教えている長岡太郎先生。
高木先生が主審を努め、長岡先生が副審だ。
高木先生は白と青のバトルスペースの境界線の外に立つと、長岡先生は高木先生と対面の場所に立った。
バトルスペースの外側には同じく3年生を担当している藤原先生と二宮先生が防具マスクの側に控えている。
この全体選抜では藤原先生と二宮先生が防具マスク着用と、最終身体検査を行うようだ。
「第1試合に出場する西郷、三口、防具マスクを着用しなさい」
3年生の英語を教えている宮元成夫先生が西郷と三口に声をかける。
西郷と三口は防具マスクを着用するため、藤原先生と二宮先生の側に行った。
「ただいまから『全体選抜PRS BATTLE』予選、女子の第1試合を始めます。白、1年A組、西郷刹那。青、2年C組、三口莉香。前へ」
主審の高木先生の声で、防具マスクをつけた西郷と三口は、踏み台のような簡易の階段を使って、バトルスペースに上がる。
すると大型スクリーンに2人の姿が映された。
「三口、頑張れー!」「西郷、勝てー!」「1年生に負けんな!」
2人の姿を見た観客席に座っている生徒達から大きな声援が飛び交い、緊張が高まってくる。
2人が定位置についたところで、主審の高木先生がゆっくりと右手を上げた。
「観客は静粛に!両者、礼!」
「「よろしくお願いします」」
向かい合った西郷と三口は頭を深く下げて一礼した。
「それでは両者セット!……RPS GO!」
――数分後。
「ヒット、攻撃成功!勝者、白、西郷刹那、準決勝進出!」
「おめでとー!」「やったな!」「明日も頑張れよー!」
西郷が明日の準決勝進出を獲得した。負けた三口は2年生なので来年は参加権が無い。これが最後の試合になった。
防具マスクを外して貰った西郷は選手控え席に戻ると、真っ直ぐトモの側へ行く。
「西郷さん、準決勝進出おめでとう」
「天樹くん、ありがとう!勝てて嬉しいわ」
満面の笑みを浮かべた西郷は、トモの両手を自分の手でしっかり握り締める。
突然手を握られたトモだが、落ち着いた様子で西郷に祝福を送っていた。
しかしそんな様子を……恨めしそうに見るなよ、ミク!西郷の作戦だぞ!
「ヒット、攻撃成功!勝者、青、前下姫芽。準決勝進出!」ワアアァァァッ
西郷がミクを動揺させるためにトモに近づいている間に、勝者が決まっていく。
よし、たまにはミクの恋を助けてやるか!
「イテテテ、トモ、すまん、助けてくれ」
「どうしたのユウ?ちょっとゴメンね」
「えっ、あ、天樹くん!?」
俺は右目を抑えてトモを呼ぶ。するとトモは西郷の手を離して俺の側に来た。
「わりぃわりい、右目にまつげがなんか入ったみたいなんだ」
「ちょっと見せて……まつげは見えないようだね」
「あー、前髪かな。しっかりヘアピンで留めておくわ」
仮病を使って西郷からトモを引き離したぞ。フフン、悪いな西郷。
西郷を見ると、思いっきり俺を睨んでいる!怖ぇぇぇ。
殺気を感じていたら、観客席から大きな声が上がった。