7-17
「ユメ、そんなに食べたらお腹壊すぞ」
「ユウ兄ちゃん大丈夫ですぅ、どれも美味しいですぅ」
ユメは目の前にある食べ物を次々と食べていく。泣きすぎてお腹が空いたみたいだ。
「そんなに食べたら太るわよ、いいの?」
ユメの様子にミクが笑いながら声をかけると、ユメは自分のお腹のほうを見る。
「ミク、意地悪言うなよ。ユメ、気にしなくて大丈夫だぞ」
俺がそう言うと、ユメは俺の顔を見ながらとんでもない一言を言った。
「ユウ兄ちゃん、いっぱい食べたら、高峰先生みたいなプルンプルンになるかなぁ?」
思わずブーッと、飲んでいたラッシーを噴出す俺。隣に座っているトモもむせている。
「トモ兄ちゃんも大きいプルンプルンが好きなんですかぁ?」
「ゴホッゴホッ……ユメちゃん、ちょっと待って」
真っ赤な顔でユメの質問にどう答えようか考えているトモ。真剣に悩むなって。
「コラ、ユ、ユメ、あんた、ト、トモに何を聞いているの!?」
「お姉ちゃん、なんで怒っているですぅ?」
ユメの質問に動揺しまくりのミク。トモがプルンプルン好きなら落ち込むよな、絶対。
「ミクちゃん、怒らなくてもいいよ。僕はスタイルより性格だね」
「じゃあ、トモ兄ちゃんは性格がいいなら、『ひんにゅう』でいいんですねぇ?」
「あ……ひ、ひん……にゅう?」
「おいユメ、どっからそんな言葉聞いてきたんだ?」
可愛らしいユメの口から飛び出す言葉に、トモや俺のほうが驚く。
「あのねぇ、お姉ちゃんの部屋の本だ……な、ググゥ……」
「あー、ユメ、飲み物ばかりでトイレが近いわね~。混む前に行きましょう」
「フグググ……(お姉ちゃん、苦しい)」
ユメの言葉を途中で塞いだミクはそのまま、ユメを引きずって女子トイレに連れて行った。
また変な雑誌をこっそり読んでいたなミク。
「トモ、お前本当はプルンプルン好きだろう?」
「うーん、無いよりはある方がいいよね?」
「プルンプルンは男のロマンだからなー」
俺の質問に真っ赤な顔で真面目に答えるトモ。こうして俺達の学校祭はユメの涙と暴言で幕を閉じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それじゃあ、プリントを配るからな。前のヤツは1枚プリントを取ったら、後ろに回せよ」
「ユウ、ほらよ」
「サンキュー、コウジ」
学校祭から数日後。学校祭の記事が載った学校誌が生徒全員に配られた。表には学校祭での各学年の取り組みや生徒会の挨拶などが書かれている。
記事の中に【残念なお知らせ】として、実名こそ出なかったが、ユメに嫌がらせをしたオタク男が例の騒動で停学処分になったことが書かれていた。
ユメのことを考えたら、全然残念じゃねいよ。あの時のユメの泣き顔を思い出すと、ムカついてくる俺。
「おい、三上どうした?顔が怖いぞ」
「あ、いや、大丈夫っす」
プリントを配り終えた鈴木先生から声を掛けられる。どうやら、オタク男への怒りが顔に出ていたようだ。
そして裏を見ると、学年選抜PRSBATTLEの結果も書かれていた。
※学校祭で開催された『PRS BATTLE』で16名の生徒が選抜されました。
※下記16名は12月18日と19日に行われる『全体選抜PRS BATTLE』に出場します。この中から来年度の男子、女子それぞれの生徒会長が選ばれます。
【全体選抜PRS BATTLE 出場者一覧】
【男子生徒会候補】
1年A組 天樹友助
1年A組 鍬土関平
1年C組 道中孝明
1年D組 三上有利
2年A組 斉木千里
2年B組 足利吉宗
2年B組 沖田俊三
2年C組 坂本隆盛
【女子生徒会候補】
1年A組 西郷刹那
1年B君 今金香織
1年C組 若松織江
1年D組 時実未来
2年A組 小脇結奈
2年A組 横関歩美
2年B組 前下姫芽
2年C組 三口莉香
「ユウ、いよいよ大詰めだな。負けるなよ!」
「そういうコウジだって書記を決めるテスト選抜の最終試験に残れたんだろ、頑張れよ」
目指す目標は違うが、俺とコウジは最終決戦への決意を熱くしたのだった。