7-13
「それでは両者セット!……RPS GO!」
トモの出した手、グー。鈴元の出した手、キョキ。
トモの左手が素早く動く! が――。
鈴元の鳩尾を狙ったトモの左手はまたも鈴元によって払われていた。
「青、デフェンス、防御成功。両者再試合、リプレイ」
「「あーぁ」」「「またかぁ」」
主審の声に、観客席の雰囲気が沈んだようになった。
『そうか、そういうことか――鈴元くんはジャンケンで勝てないことも、僕が攻撃する場所も分かっているんだ』
1回目の勝ちでの攻撃を鈴元に防御されたトモは、そのことを考えていた。
もし、鈴元がジャンケンの勝ちを意識しているなら、攻撃の態勢がでているはずだが全く無い。
トモは鈴元の体の動きを見て、攻撃をする気が無いのに気づいた。
『次は鈴元くんに負けない!』
トモの心に決意が生まれる。そしてトモ、鈴元が体勢を整えた時、二宮先生から合図が出た。
「両者セット!……RPS GO!」
『これで終わらせる!!』
『またかわしてやる!!』
2人の気迫がぶつかった時――
「Hit!!!」の文字が白の電光掲示板に光ると同時に、ブーーーっと、大きな機械音が響いた。
トモの出した手、パー。鈴元の出した手、グー。攻撃権はまたもトモ。
ジャンケンで勝ったトモは鈴元のヘッドに狙いを定める。
鈴元はトルソーを防御する姿勢だったので、トモの左手をかわせない。
トモの左手は素早い動きで鈴元の右側頭部を直撃していた。
「ヒット、攻撃成功!勝者、白、天樹友助!」
「「おめでとー」」「「やったな!!」」
「試合終了、両者、礼!」
勝者を告げる二宮先生の声が会場に響いた。
『嘘だ……こんなの嘘だ』
二宮先生の指示でトモと礼をかわした鈴元はトモの顔を睨んだ。
「天樹!お前、ヘッド(頭)は狙わないんじゃなかったのかよ!」
「うん、そうだよ。防具マスクをつけているとはいえ、狙うのは抵抗があったんだ」
鈴元は怒鳴るような声に対してトモの声は落ち着いている。
「でも鈴元くんに防御されて、そのことに気づいたんだ」
「天樹、いつ気づいた?」
「最初の防御ですぐ気づいたよ。2回目の防御で確証したんだ」
全てを理解した鈴元は大きく息を吐いた。
「はーあ、大病院のお坊っちゃまだと思っていたのになぁ、やっぱダメだったかあ」
「鈴元くんの言うとおりだよ」
「えっ?」
「真剣勝負なのに、僕は甘くみていたんだ。鈴元くんの防御が無かったらそれでいいと思っていたよ。ありがとう」
トモは鈴元との対戦で、自分の甘さを反省しながら、そのことを教えてくれた鈴元に感謝した。
そして鈴元は自分の非を素直に認めるトモに感動する。
「天樹、甘くならずに頑張れよ」
「そうだね、鈴元くん」
2人は近寄り握手を交わすとバトルスペースから下りて、先生から防具マスクを外してもらった。
鈴元はさっぱりした顔で、青のバトルスペース横で出番を待っている俺の側に来た。
「三上、負けちまったよ。やっぱあいつ強いな」
「鈴元もすごかったぞ。今までトモの攻撃を防御したヤツなんていなかったんだぞ」
「ハハハ、そいつは嬉しいや。じゃあ俺はモニターから応援しているな」
そう言うと、鈴元は着替えるために更衣室へ向かう。
今日も試合に負けた方はその時点で『RPS BATTLE』参加権が無くなり、体育館から出なければならないのだ。
鈴元の姿を見送っていると、主審の二宮先生の声が聞こえた。