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「――そろそろ『学年選抜RPS BATTLE』を再開します。第5試合、第6試合に出場する生徒はバトルブース内に控えてください――」
体育館の中に、女性の声で時間を知らせるアナウンスが流れた。この声、女子生徒会長だな。
「後半はミクちゃんの出番だね」
「今度はイエローカードもらわないように――『バキッ』――イッテー」
「ユウ、あんた一言余計よ」
心配して声をかけたのに、思いっきり頭を殴られた。父さんにも殴られたことないのに!
「ハハッ僕とユウは観戦席で応援するから頑張ってね」
「ありがとうトモ、頑張るね!」
ミクは両手を胸の高さまで上げた可愛らしいガッツポーズをすると、出場選手控え席に向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「第8試合、白1年C組、住吉佳苗。青1年D組、時実未来」
1年生女子の審判を努めるのは3年C組の担任で理科を教えている長岡太郎先生。
副審判は2年D国の担任で英語を教えている近藤薫先生だ。
「「時実さん、頑張れー!!!」」
予選を勝ち抜き、体育館に残ることのできた男子生徒のほとんどが青の応援席に押しかけた。
防具マスクを被っているためミクの顔を見ることができないのに、なぜこんなに殺到するんだろう?と、ミクの求心力に恐怖すら覚える。
「「未来!」」「「未来!」」「「未来!」」
「「未来!」」「「未来!」」「「未来!」」
「「未来!」」「「未来!」」「「未来!」」
まだミクの試合が始まっていないのに、男子達の熱いミクコールがこだまする。やかましい、うるさすぎだぞ!と、思った時。
「いい加減しろ!!本当に時実が好きなら静かに見守れ!このサルどもー!!」
騒いでいる男子達の目の前にいるのは、我等がD組担任の鈴木先生だ。
鈴木先生の怒鳴り声に今まで騒いでいた男子達が静かになる。
「時実は今、自分と戦っているんだ!邪魔するなアホども!」
「「すいませんでしたー」」「「ごめんなさい」」
鈴木先生に怒られた男子達は次々と謝罪した。男子達が大人しくなったのを確認した鈴木先生はそのまま2年生のバトルブースに向かった。
鈴木先生!あんた最高だよ!俺の目には、このくたびれたおっさんがものすごく格好よく見えた。
観客席が静かになったところで、審判を努める長岡先生が合図を出す。
「両者セット!」
その声で住吉とミクはジャンケンを出す体制をとった。
「……RPS GO!」
――ミクのバトルが始まった。
観客席で騒いでいた男子共も息を呑んでミクのバトルを見守る。
この時俺達は知らなかったが、ミクの試合を観ようと1年生女子の試合中継先である3年D組に男子生徒や男性一般客が殺到。
急遽、視聴覚室を開けて、1年生女子の試合を中継したそうだ。
ミク、お前はやっぱり恐ろしい子だな。
「青、デフェンス。両者リプレイ」
相変わらずじゃんけんに弱いミクだが、相手の攻撃を素早く、柔らかい動きでかわしていた。
そのため、ミクと対戦している住吉は防具服越しでも分かるくらい肩で息をしている。
対して、ミクは足もしっかり床についていて、疲れている感じがしない。




