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いわゆる俺とトモの幼馴染みで俺たちは「ミク」と呼んでいる。
ミクは父親の仕事の関係で中学校卒業後にこの高校の近くに引っ越ししたので、俺達とは違って徒歩でこの高校に通うはずだが――。
俺はミクの姿を見ると、深いため息を吐いてガックリと肩を落とした。
周りから見ると、男子だけではなく女子からも人目を引く可愛らしい女の子を目の前に、嫌そうなため息を吐いている俺が不思議に見えるだろう。
しかーし!クラスの奴らが騙される前にはっきり言いたい。
コイツは昔から黙っていればお人形以上に可愛いが、喋りだすとめちゃくちゃうざいんだ。
「それはこっちの台詞よ。あーぁ、トモと同じクラスを狙って一生懸命勉強したのに。よりによって試験当日に熱が出て結果ユウと同じクラス。私ってなんて不幸なんだろう。これも美少女に与えられた試練かしら?」
口を尖らせ、膨れる顔ですら「計算しているのか?」と思うくらい可愛いが……。
自分で自分のこと美少女とか言うか。はぁ、やっぱりうざい。
こいつの本性を知らない、外見だけに惹かれてミクに告白をしたヤツは多い。
だがいずれも「他あたって」「興味無い」「無理」と再起不能になるくらい冷たくバッサリ切られた。
なぜなら……ミクは幼稚園の時から、トモのことが大好きなんだ。
いや、好きを通り超えてストーカーに近いくらいトモの好みを調べている。怖ぇぇっ
ミクは行動派で毎年、バレンタインには手作りチョコ。誕生日には手作りケーキを作りトモに渡している……が。
肝心の告白が出来ないのと、トモは恋愛に極端に鈍感なのでミクの気持ちに全然気がついていない。
「まあ、今年1年は仕方ないわね。来年はこれからの成績でまた振り分けが変わるから、その時はユウと違ってトモと同じA組になるわよ。とりあえず1年間だけよろしくねユウ」
俺と鈍感なトモ以外の男なら誰でもクラっと来るような極上の笑みを浮かべながら失礼なことを言いまくるミク。
「な、な、何を言う!俺だってしっかり勉強して余裕でA組に入ってやる!」
「ムダムダ。無理なことはしないほうがいいわよ。きっとテストの度に知恵熱でもだすのがオチよ」
「入試の時に高熱を出したヤツに言われたくはないな」
「そうね。何とかは風邪引かないって言うものねぇ」
フフンと鼻で笑いながら俺をバカにするミク。
ああ言えばこう言う。あぁー、メンドクセー。
「ったく、可愛くねぇ」
「ユウ以外には可愛いって言われていますよぉ」
「フッ、俺と『トモ』以外にだろ?」
「ムムゥッ~」
俺とミクは互いに意地をはり、思いっきり睨み合った。