7-2
―学校祭当日―
D組の教室は教壇側にたこ焼きを焼いて売るスペースが作られ、後ろの掲示板側が射的コーナーになっていた。
女子のほとんどと男子の一部は浴衣に着替えていて、ちょっと華やかな雰囲気。
そこへバタバタと走る音をたてながら、始業時間ギリギリに息を切らして登校してきたのは高校のすぐそばに住んでいるはずのミク。
「おはようー!ふぅ~、間に合ったあ」
「おはようミク。結構ギリギリに来たな」
「うん、ユメが学校祭楽しみなのはいいけど、小学校行きたくないっていうから説教してたの」
声を掛けた俺に、呆れた顔で今朝のユメのことを話すミク。
学校祭1日目は金曜日。平日だからユメは小学校に登校しないといけないんだ。
ミクの話しだと、ユメにキツク説教したんだろうな。
「またユメを怒って泣かせたな」
「じゃあ、ユウが説得してよ。まだ家で泣いているはずだから」
泣いているユメを家に放置して、学校に来た冷たいミクに俺はため息をつく。
鞄からスマホを取り出して、ミクの家の番号を表示した。
「ハイハイ、学校に行かせればいいんだろっと」俺は電話の画面を開いて、ユメの携帯に電話をする。
しばらくプププと発信音が鳴ったあと、通話が繋がった。
「ズズズズーーーッ……ユウにいじゃーん……ユメもぉ、がっごうざい……いぎだ……オオン」
結構泣いたんだろう、声がグチャグチャになっているユメ。ったくミクのヤツ、どんだけキツク怒ったんだろう。
「おう、ユメ。……可愛いんだから、泣くな……」
「だっで……おでぇちゃんが……じょうがっごういげって……グズズ」
あーんもう、泣いているユメもなんて可愛いんだろう!って、言っている場合じゃないよな。落ち着かせて小学校に行かせないと。
「うん……明日一緒に……たこ焼きな……」
ユメを説得した俺はスマホの通話を切ると、ミクに向かってニヤリを笑う。
「ユメ、学校に行くってよ」
「ハァー、なんでこんなヘアピン男の言うことを聞くんだろ……」
ユメが俺の言うことを聞いて、面白くないミク。
「失礼だぞミク。それに今日のヘアピンはユメとお揃いのアルファベットのY柄……イテッ!」
「だから余計ムカつくのよ!」
ミクは俺の高等部を平手打ちした後、自分の席に座った。
「全く、すぐ暴力を振りやがって」
俺は後頭部を擦りながら、ブツブツ文句を言った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それでは、井口、小林、鈴元、三上、江川、木田、時実、布施。以上8名は『学年選抜RPS BATTLE』を精一杯頑張ってきてください」
「「「ハイっ」」」
「頑張れよー」「A組なんかやっつけちゃえ」
朝のHRで、鈴木先生が『学年選抜RPS BATTLE』に出場するD組メンバーに エールを送ると、クラス中からパチパチパチ……と、大きな拍手が起こった。
俺達は熱い応援を貰ったあと教室を出て、体育館に向かった。