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「ユウ、英語は話せるのに全く書けないって本当?」
お昼ごはんを食べながら、ミクが呆れた声で俺に話しかけてきた。
ちなみに今日も、ミクとトモはミクが作ったトモへの愛情弁当。
俺の方は自分で作った、チーズハンバーグ弁当。
「んー、話すだけなら、英語、ドイツ語、イタリア語は話せるんだけど……スペル(字)が全く分からないんだよな」
「ある意味それも特技だね」
「さっすがトモ、俺のことを分かってるぅ」
「それって単なる特異体質じゃないの」
「なんだよぉ、その俺がアレルゲンみたいな言い方」
トモに持ち上げられた気持ちがストンと落ちてしまう。
本当、ミクは俺を虐めるのが特技だ。クスン。
「ハハッ、そういえばD組は学年プリントもらった?宿泊学習の記事が出てるよ」
「うちのクラスはまだ貰ってないよね、ユウ?」
「天堂先生はやることが早いなぁ。トモ、そのプリント今あるのか?」
「うん、これだよ。ここに出ているよ」
トモは箸を一旦置くと、制服のポケットの中から折り畳んだプリントを取り出す。
そこには宿泊学習での行き先や天候、そして『クラス選抜PRS BATTLE』と書かれた文字。
そして裏をめくると、クラス選抜を勝ち抜いた生徒の名前が出ていた。
『学年選抜PRS BATTLE 出場者一覧』
A組男子:天樹、鍬土、新町、依田
A組女子:清川、桜木、西郷、広野
B組男子:青戸入船、道中、松前
B組女子:今金、江差、八雲、湯川
C組男子:奥沢、塩谷、富岡、星野
C組女子:石山、住吉、花園、若松
D組男子:井口、小林、鈴元、三上
D組女子:江川、木田、時実、布施
※『学年選抜』は9月12日金曜日・13日土曜日に行います。
※12月に行われる『全体選抜~決勝戦』に出場できるのは、この中の男子4名、女子4名。です。
「9月12日って学校祭だよな?」
「うん、毎年『クラス選抜』は学年別宿泊学習で。『学年選抜』は学校祭。 そして『全体選抜~決勝戦』は12月18日木曜日と19日の金曜日、終業式の数日前に行われるみたいだね」
「しかし、なんでこんなバトルに8ヶ月もかけるんだろうな。パーッとやってしまえばいいのに」
「うーんでもそれだと、格ゲーに慣れていない人に1ヶ月で大会に出て優勝してくださいって言うようなものだよ」
それもなんか違うような気がするが、トモの言うことに間違いはないだろう。
「トモは本当に格闘技系が好きなのね」
「あー、いや、何だろ。昔から必死に戦うものが好きなんだよね」
ミクに突っ込まれたトモは首に手をやり、恥ずかしそうに話した。
「まっ、夏休みはパーッと遊んで、9月の学年選抜を頑張ろうぜ!」
「遊べたらね~、ユ・ウ」
「どういう意味だよ、それ」
「もうすぐ学力テストがあるじゃない?中学と違って高校は赤点を取ると、追試験があるわよ」
まるで俺が赤点確定のようなことを言うミク。ムカツクなぁ。
「だからトモに勉強を教わるんだよ。なぁ、トモ?」
「そうだね、勉強頑張って赤点は取らないようにしなくちゃあ」
宿泊学習の最終日。同室の矢田と森から学力テストのことを聞いた俺は、トモに勉強の相談をした。
俺を励ますかのような優しい笑顔を浮かべるトモ。やっぱりコイツは心友だ!
「大丈夫、問題ない。やる時はやるぜ」
この日から、学力テストに向けて、俺の猛勉強が始まった。