6-2
「先生!俺はずっと『PRS BATTLE』はお座敷遊びのくだらないものだと思ってました!で、でも、それは間違っていたんですね!」
ガタガタッと、椅子から立ち上がった女子生徒の目から溢れる涙。
「私も『じゃんけん遊び』で何が変わるんだって、思っていた自分が恥ずかしいです!」
「先生!俺も反省しました!」
「私も聞いて感動しました!」
「皆さん……そうですか……分かってくれましたか」
先生は目を真っ赤にしながら、嬉しそうに微笑む。
「先生、俺、三原創立者に恥じないように『PRS BATTLE』頑張ります!」
「俺もだ!」「俺も」「私も」「私だって!」
椅子から次々と立ち上がった生徒達は、泣きながら決意を新たにする。
「そうです。その気合こそ、創立者でもあり、初代校長だった三原則輔の希望です。今回勝ち抜いた皆さん、来年また兆戦される皆さんにとって、『PRS BATTLE』は過酷な試合になるでしょう。でも、己に負けないで頑張ってください」
「「「天堂先生!」」」
キンコーン、カンコーン……
クラス全員の心が一つになった時、チャイムの音が授業の終わりを告げる。
「今日の話はここまでです。次の英語の時間までに今日私が話した『創立者・三原則輔の半生』を英文でノートに書いてください。では」
「起立、礼」日直の言葉で、天堂先生は教室から出て行き、後には感動が残っていた。
「先生の話、感動したなぁ、ユウ」
「ああ、思わず俺も涙ぐんだぜ」
「ハハハ、俺も彼女には見せられないな」
天堂先生がD組を去った後の教室には、創立者・三原則輔の感動秘話で盛り上がっていた。
「ところでコウジ、『日本人捕虜収容所』って英語でなんて言うんだ?」
「ハアァァァッ!?」
コウジが大きな声を出した為、クラスの視線のほとんどが一斉に俺とコウジに向く。
「ユウ、今、お前なんて言った?」
「いや、さっき天堂先生、次の英語までに創立者の半生をノートにまとめておけって……」
「あ、あ、ああーっ!そういえばそんなこと言ってたぁ!って……英語、明日の5時間目だぞ!」
コウジの叫ぶような声に、騒然となるD組教室。
「ぬあぁぁぁ、聞き流していたー」
「ちょっと誰よ~、先生に創立のこと聞いたヤツ!」
「チョッ、俺が悪いって言うのかよ!」
男女関係なく大声が飛び交い、騒然となる教室。D組一丸の心が音をたてて粉々に崩れた……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「トモ、ノートありがとな。マジ助かったぜ」
俺はトモから借りたノートを手渡した。
「ううん、昨日の今日で、三原創立者の半生を英語でまとめるなんて大変だよね」
「おう、トモがいなかったら俺、どうなっていたか」
「きっと、卒業するまでまとめられなかったんじゃないユウ?」
「グッ! ミクお前、それ言いすぎだろっ!」
俺とトモ、ミクはいつものようにB組とC組の間にある、小ホールのベンチに座って昼ご飯を食べていた。
昨日の天堂先生からの英文の宿題。
英語を話すことは出来るが単語が分からない俺は、トモに相談をした。
するとトモは夕方、俺に英文を書いたノートを貸してくれたのだった。
自分の勉強もあるのに俺の為に。なんて優しいんだろう。
俺はトモの優しさに、一晩、枕を涙を濡らした。