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「ユウの中学の成績でここに受かっただけすごいじゃないか。さあ教室に行こう」
「そこまでいうかよ。まあいいさ、サッサとD組に行くわ」
物思いに耽っていたのが、ボーッとしているように見えたのだろう。
トモが笑いながら俺の左肩を軽く叩いて、貶しているのか励ましているのか分からないような声を掛けてきた。
そんなトモを横目で羨ましく睨みながら、俺は掲示板から離れた。
そして白い外壁と縦に細長い黒い窓枠が並んでいる4階建ての校舎を眺めながら玄関へ向かう。
俺とトモは生徒玄関に入り、自分の名前が書かれた靴箱を探して新品の上靴に履き替えた。
「1年生は最上階の4階なんだね」
「階段いい運動になるさ、さっさと行こうぜ」
階段に向かったところで、俺は壁に貼られている「学校案内図」を見つめた。
この幸命高校は、1階は玄関の他に保健室、部活動の部室、生徒会室などがある。
2階は職員室、会議室と3年生4クラスの教室。
3階は特別教室と2年生4クラスの教室。
4階は特別教室と1年生4クラスの教室となっている。
階段を上がってすぐ目の前に見える教室がA組で、廊下を渡りながらB組、C組、D組と続いていく。
B組とC組の間にはトイレと水飲み場、木で出来た4人掛けの椅子とそれに合わせたテーブルがいくつか置いてある小ホールがある。
休み時間はそこでも過ごせるようになっているようだ。
1階にだけ細長い渡り廊下があり、それが校舎と体育館をつなぐ通路になっている。
「じゃあ、ユウ放課後会おうね」
「授業が終わったらここで待ち合わせな」
階段を上り4階に足を踏み入れた俺とトモは廊下を進み、お互いの教室に入ることにした。
「ここがD組か……」
俺は「1―D」と書かれたプレートがある教室の扉の前に立った。
同じ中学からは数人しかこの学校に来ていないので、少し緊張してしまう。
見た目は「チャラ男」っぽく見られる俺だが、結構人見知りが激しい。
しかし、いつまで考えていても仕方がないと覚悟を決めた俺の手が扉に触れた。
ガラガラガラーッ
俺は教室の扉を開けたが、緊張の余り周りを見ることなく、真っ直ぐ座席表が貼ってある黒板に目を向けた。
座席表は一番上に≪教壇≫、右に≪廊下側≫、左に≪窓側≫と書かれ、その内に縦6列、横5列の30人の名前が書かれている。
「俺の席は……窓側の一番後ろだ。ん?この『時実未来』って名字……まさか?」
その時、俺は背後に嫌ーな気配を感じてしまう。そしてゆっくりと体を捻り、後ろを振り返ると……。
「やっぱりユウじゃん☆」
「ゲッ、なんでミクがここにいるんだよぉ」
そこには……肩に少しつくくらいの真っ直ぐで柔らかそうな髪。クリッとしてちょっと潤んだ瞳。艶やかでちょっとふっくらとした口。スラリとした手足。色白で身長が158cmくらいの可愛らしい女の子が笑顔を浮かべていた。