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RPS BATTLE SCHOOL  作者: 赤木梓焔
とある3人の日常生活~花火は最高!
59/109

6-1

「天堂先生、どうしてこの高校は『PRS BATTLE』をするようになったんですか?」

 『クラス選抜PRS BATTLE』が行われた宿泊研修から数日後。

 5時間目の英語の時間。

 D組の授業で訪れた天堂先生が教科書を開こうとした時、一人の男子生徒が先生に質問をした。

「オレも知りたーい」「私も」「俺も」

 D組のあちこちから先生に向けて手が上がる。

 なぜ天堂先生の授業で、勉強とは関係のない質問が上がったのかと言うと――。

 我らが担任の鈴木先生に質問しても「おっ、あれは何だ」と教室の窓を指差し、その隙に逃げてしまうからだ。

「そうですね。では、この時間は授業ではなく、『PRS BATTLE』の誕生をお話します」

 先生はそう言うと、持ってきた英語のテキストを閉じた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 1950年――某日本人捕虜収容所。


「ヘイッ!今日も面白いものを見せてくれよ」

「言っておくけど、猿の物真似は見飽きたからなー、ハッハッハッ」

 戦争に負け、東南アジアで米軍人に捕まった三原則輔みはらのりすけ達、日本兵は収容所で見世物にされていた。

『くそッ、お国の為に頑張ったのに!……仲間という人質がいるから自害もできない』

「俺たち、お前らをボールにするのも飽きたんだよっ!」

 一人の米兵が三原の隣にいる年老いた男性にドガッと、蹴りを入れる。男性は「う、うう……」

と唸り、片足を抑え床に座り込む。

 しかし、仕返しがある為、誰もその男性を助けることができない。

 三原は思わず目を閉じた。毎日のように見る光景から逃れるように。

 すると頭の中に遠い地の日本が浮かび、思い出が頭に浮かんだ。



『帰りたいな日本へ、最後に行ったのは京都だっけ――』

 徴兵の赤紙が届いた後、京都にいる親戚が祇園に連れて行ってくれた時の記憶が走馬灯のように甦った。

 美しい女性、美味しい酒……ハッ!!!

『そうだ!あれがあったじゃないか!?』

「ドー、ユー、ノー、じゃんけん?」

 三原は先ほど日本人捕虜に蹴りを入れた米兵に、カタコトの英語で話した。

「ホワッツ?ジャンケン?」

「あー、これがグー、これがチョキ……」

「オー、ロック、ペーパー、シザー、イエス!」

 三原は米兵に日本のお座敷遊びだと行って、ジャンケンに勝った方が負けた方を攻撃できる遊びを教えたのだ。

「ジャンケンポン!」 ガツッ!

「オー、ユーの勝ちね」

 その後、三原は自分達を理不尽に扱っている米兵達に次々と勝っていった。

 自分の右手と頭を抑えている米兵を交互に眺める三原。

『これだ――戦争では負けたけど、ジャンケンでは勝てるじゃないか!』


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……こうして過酷な収容所生活を終え、日本に帰国した三原則輔は幸命高校を創立し、その代表となる人物をジャンケンバトルで選抜することにしたのです」

 話を終えた天堂先生の目には涙が浮かんでいた。

 天堂先生から聞く幸命高校の創立者三原則輔の話に女子だけではなく男子の目にも涙が溢れている。

 俺も思わず制服のポケットからハンカチを取り出すと、そっと目にあてた。

「創立者でもあり、初代校長三原則輔の願いは『このバトルで、瞬時の決断力、行動力、度胸を身につけ、その力で未来を切り開いて行ってほしい』だったのです」

 天道先生の話の後、ガタッと、一人の男子生徒が椅子から立ち上がった。


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