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「ユウ、どうした?頭痛かい?」
「おぉ、トモ!俺だって気づいたな」
声のした方に顔を向けると、俺の目の前には心配そうな顔をしているトモが立っていた。
「天樹くん、『ランクD』のことは『ランクD』同士に任せたら?」
トモの左横には……厳しい顔をした西郷。
この女、ム・カ・ツ・ク。
「うおぉぉぉ、トモ、頭がちょっとガンガンして、右手がピリピリしてるんだよぉぉ」
「えっ、頭が……?」
「ちょ、ちょっと、何?」
俺はトモの右肩に自分の頭を乗せて、頭痛を訴える。
西郷、トモは返してもらうぜ。
「ユウ、指先が痺れる頭痛は良くないよ。西郷さん、ユウの症状を見たいから他の人に頼んでくれる?」
「えっ、あ、でも……」
西郷は戸惑いの表情を浮かべたが、トモは気にせず、A組の女子に声を掛けた。
「あっ、桜木さん。西郷さんをお願いしてもいい?うん、ありがとう。じゃあ西郷さん、また後で」
「は、はぁ、分かったわ……」
不満そうな顔をしながら、西郷は桜木と一緒に施設の中に入っていった。
「ユウ、頭痛はいつから?こういうのは早く言わないと……」
トモは俺の右手首をしっかり掴む。どうやら脈を数えているようだ。
「あー、頭痛は今治まった。心配かけて悪かったなトモ」
直ぐに仮病だと悟られるのはどうかなと思ったが、トモの真剣な態度に罪悪感が芽生えたんだ。
「ホント、大丈夫?無理して倒れたら大変なことになるよ」
「大丈夫だ、問題無い。それより、西郷の側にいなくていいのか?」
西郷とのことを何て聞こうか悩んでいたが、ストレートに聞いてみた。
「西郷さん?彼女は今朝メガネじゃなくてコンタクトにしたんだけど、買い物の時に右目にゴミが入って見辛くなっていたんだ」
「そういや、今日はメガネっ娘じゃなかったな」
「メガネはホテルに置いてきたって言って、視力が悪くて片目だけだと遠近感がなくて危ないから」
「じゃあ、トモがグッズ店で西郷と居たのはそれが理由だったのか?」
「バスのステップって高さがあるからね。上るのを手伝っていたんだ」
当たり前のことのように詳細を話すトモ。
つまり、トモが西郷と一緒にいたのは人助けだったのか!
相変わらず優しいと言うか、困っている人をほっとけないトモ。
まっ、でも真実が分かったところで一件落着だな。
「いやー心配かけて悪かったな、トモ。さっ、加工施設を見学しようぜ」
「ユウがそこまで言うなら……じゃあ、一緒に中に入ろうか?」
「あっ、俺、ちょっとトイレに行くわ、じゃあな!」
「え……ユウ?」
そうそう中に入ることより、ミクにこのことを伝えるほうが先だ。
俺はトイレの個室に入るとトモから聞いた話をミクにメールした。