5-14
「あれがゴローの家かぁ」
「本当に石で出来てる~」
「ルールー、ルルルル……」
「お前、本当はいくつだ?」
宿泊学習2日目。
ホテルで朝食を済ませた俺達1年生はバスに乗って、旭川より南にある富良野を観光していた。
「ホラー○ンの抱き人形可愛い♪」
「あっ私もそれにしようかな?」
富良野にある某人気アニメのグッズのある店内で女子達が騒いでいる。
しっかし、女って『みんなとお揃い~』が好きだよな。
と、思いながら俺が手にしたのは、ツンデレキャラの顔がついている髪飾り。
「こんなのはユメ喜ぶかな?」
俺は他のキャラの髪飾りを手にとって、よく眺めていた。
「またそれもユメと揃えるの?」
「どわあぁぁっ、ミク!?いきなり後ろから話しかけるな!」
「近づいたのも気が付かないくらい真剣に見ていたくせに」
フフンと俺の気持ちを見透かしたような顔をするミク。
「な、なんでこれがユメへの土産だって気づいたんだよ」
「ユウ、気持ち悪いくらいニヤニヤしながら『ユメが喜ぶかな』ってブツブツ言ってるんだもん。」
ニヤニヤ、ブツブツは言われても仕方無いが、気持ち悪いだけ余計だと思う。
「それより、ユメの髪飾りはともかく、ユウは髪飾り止めたら?」
「えー、いいじゃん別に」
俺は自分の耳の上にある、水色のピン止めに触る。
「男のくせに小学校の時から横の髪をピンで留めちゃって」
「男のくせにってなんだよぉ、小学校の中学校も校則に『男子の髪飾り禁止』なんてなかったぞ」
俺が前髪の横にある髪をヘアピンで留めるようになったのは小学校2年生の頃。
この時俺は母さんとフランスに単身赴任していた父さんのところに遊びに行った。
そしてパリ市内でお土産を探していた時に、お店の人が俺の髪にトリコロール柄のヘアピンをつけてくれた。
以来、俺は自分の髪にヘアピンがついてないと、落ち着けないんだ。
「……なんでユメもこんなヘアピン男が好きなんだろう」ボソッ
「ん?今なんか言ったか?」
「ううん、ユウの気のせい、気のせい」
ミクの怪しげな態度。上手く誤魔化されたかな俺。
「ところでお前は何か買ったのか?」
「道場の練習に来た子供に配るお菓子とユメにはぬいぐるみを買ったわ」
ミクはそう言うと手にした紙袋を宙に上げて、俺に見せた。
「そっか、じゃあ俺も会計してくるわ」
俺は土産をカゴに入れると、レジへ向かった。
「次に場所に移動します。急いでバスに乗りなさい!」
先生方の声に誘導され、D組のバスに乗ろうとした時、何かが視界に入った。