5-13
「両者セット!……RPS GO!」
鈴木先生の声で出した手は――。
ミクの右手がチョキ。月読の右手はパー。ミクの攻撃権だ!
「ミクちゃん、じゃんけんに勝ったよ!」
「あぁ、やっとだ」
ミク側の電光掲示板に「Attack」と点灯される。
「ヤァァァー!」
ミクはジャンケンで出した右手をそのまま月読の鳩尾に伸ばしていく!
しかし、疲れがピークにきている月読は足がもたついているだけだ。
ドンッ!!! ブーーーッ!!!
ミクの電光掲示板から大きな機械音が流れた。
白の電光掲示板には「Hit!!!」と点灯されている。
「ヒット、勝者、白、時実未来!」
「「ありがとうございました!」」
バトルスペース上で挨拶を交わしたミクと月読は、お疲れ!と言って抱き合っていた。
「「時実さん、おめでとう」」「「ヒューヒュー」」
「ありがとうございました!」
体を半回転した後、白のバトルスペース後方で応援していた男子にも頭を下げるミク。
その後、俺達と同じく、先生からマスクを外してもらい、バトルスペースから離れた。
「やっと、勝ったなミク」
「ミクちゃんお疲れ!運動のあとは水分を補給したほうがいいよ」
「ユウ、トモ、ありがとう!ホント、疲れたぁ~」
トモからスポーツドリンクのペットボトルを貰ったミクは、お礼を言いながらそれを一口飲んだ。
「てか、お前、ジャンケン弱すぎ」
「仕方ないでしょ。人間一つくらい欠点ないと」
俺の辛口にミクはちょっと口を尖らせて反論する。
なんだよ。そのジャンケン以外は完璧みたいな言い方。
「アハハ。でも、ジャンケンで勝てないと攻撃権が無いから、厳しくなるよね」
トモが優しくなだめるような口調でミクに話しかける。
「うーん、どうやったらトモのようにジャンケンが強くなるのかな?」
「普段は手の平にある、蝶様筋と背側骨間筋の動きから次の手を考えているんだ」
だーかーらー、人間の筋肉の動きでジャンケンの手が分かるのはトモ、お前だけだ。
「今回はグローブを着けているから、指の動きを見ているんだ」
「ありがとう、指の動きを意識して頑張る」
ミク。俺達人体の知識無いんだから無理だって!
「うん、頑張ろう。あっそろそろ僕はA組に戻るね」
「おう、お互いに頑張ろうぜ」
こうして夜の7時から始まった『クラス選抜PRS BATTLE』は2時間ほどで終了した。
「これで『クラス選抜PRS BATTLE』の予選を終了します。各自、防具服を着替えたら部屋に戻り、入浴時間になります。全員、お疲れ様でした!」
「「「お疲れ様でした」」」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「「三上、おめでとう!」」
「矢田、森、ありがとう!」
部屋に戻った俺は同じ部屋の矢田と森から熱い祝福を受けた。
「三上の今日の攻撃早かったぞ。明日もあの調子で頑張れ」
「矢田の言う通り。負けた俺の分も頑張ってくれよ」
「矢田、森……俺、お前らと同室で良かったよ~」
矢田と森の優しい祝福の言葉に、俺の目頭が熱くなる。
「おいおい、三上泣くなよ~。遅くなるから風呂に行こうぜ」
「お、おう、ここの風呂は男女共、屋上露天風呂らしいな」
「ってことは……今行くと、と、時実さんもお風呂に入っていたりして!」
「それは美味しいぞ!三上、矢田、急ぐべ!」
こうして屋上露天風呂に行った俺達。
しかし先生の監視があり、矢田と森は女性風呂を覗けなかった。当然か。
落ち込んでいる2人を連れて部屋に戻った俺は、明日の決勝に備えて大人しく布団の中に入っていった。