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RPS BATTLE SCHOOL  作者: 赤木梓焔
最初の行事は宿泊学習!
46/109

5-12

「白、時実。青、月読つくよみ。両者、礼!」

「「よろしくお願いします」」

 バトルスペースに入ったミクと、対戦する月読が互いに頭を下げる。

「ヒューヒュー」「時実さん頑張れ!」

 ミクの対戦を見ようとD組のバトルスペースには、たくさんの男子生徒が集まってきた。

「ミクちゃん、人気モノだね」

 トモ……さっきまで女子から声援を受けていたヤツがよく言うぜ。

「観客は静かに!両者セット!……RPS GO!」

 ミクの右手がグーを出すと同時に月読の左手はパーを出していた。

 青、月読の電光掲示板に「Attack」と点灯される。月読の攻撃権。

「ミクちゃん、相変わらずだね」

 ジャンケンに負けたミクを見つめるトモの目は心配そのもの。

 そうだ!ミクは昔からジャンケンに弱かったんだ!

「やあぁ!」

 ミクと向かい合った月読の左手が、ミクの右肩に向かっていく!


 その時、ミクの体がフワッと動いた。

 右足を一歩下げ右肩を後方動かすと、左手は伸びてきた相手の左手をそっと押さえる。

 そしてそのまま右足でつま先立ちをして、左足を前に蹴り出してクルッと旋回する。

 その美しい回転はまるでバレエ「白鳥の湖」に出てくる、黒鳥オディールのグラン・フェッテ(回転技法)のようだ。

 ミクは狭いバトルスペースの中で軸足がぶれない綺麗な1回転を決める。

「おぉ~」「ヒュ~」

 ミクのしなやかな動きに、対戦を見ていた男子生徒達から歓声が上がった。

「ミクちゃんの防御は完璧で綺麗だね」

「あぁ、そうだな……」

 格闘技マニアのトモはミクの防御を皆とは違う、別の視点から見ていた。

白、ミクの電光掲示板に「Defense」と点灯される。

「ディフェンス」

 審判の鈴木先生が判断を下す。

 その後、電光掲示板には「Replay」の表示された。


「リプレイ!両者セット!」

 ミクが月読の攻撃を防御したので、試合は振り出しに戻った。

「RPS GO!」

 ミクの右手がチョキを出す。しかし、相手の左手はグー。

 また、青、月読の電光掲示板に「Attack」と点灯された。

「ミクちゃん……また、だね」

「うん、だな……」

 俺とトモはミクのジャンケンの弱さにため息をつく。

「ハアァァ」

 今度は月読の左手がミクの額に飛んできた。


 だが、ミクの上半身はその左手との距離感を保ったまま、ゆっくりと後ろに傾いていく。

 クニャッと、背中を大きく反らしながらも、ミクの右手は的確に相手の左手を押さえている。

 その柔らかい動きはオリンピックで優雅なレイバック技を披露し、金メダルを獲得したフィギュアスケート選手を思わせた。

「ウホォォォ」「すげ~」「綺麗~」

 ミクの防御に男子達だけではなく、女子達からもため息のような声が上がる。

 白、ミクの電光掲示板に「Defense」と点灯された。

 ミクと月読が体制を直す。両者の電光掲示板に「Replay」と点灯された。

「ミクちゃんの柔軟性はすごいよ!格闘技において柔らかい体は……」

「トモ、お前本当に格闘技が好きなんだな」

 ミクの動きを見ながら、格闘の世界に頭が飛んでいったトモを、もう誰も止めることができない。

「デフェンス、リプレイ!」

「ハア、ハア……」

 攻撃をしても全て柔らかい動きで交わしてしまうミクに、月読は焦りと疲れが出てきたようだ。


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