5-10
「白、三上。青、新山。両者、礼!」
審判を務める鈴木先生が指示を出す。
俺と、向かい合っている新山は手を体の横におき、深く一礼をする。
『RPS BATTLE』の開始の時は対戦相手に敬意を払うため、お互いの頭を下げるのが決まりだ。
礼を終えた俺と新山はそれぞれの立ち位置に着く。
入学式でのルール説明にもあったが、『RPS BATTLE』では、自分のバトルスペースから足が少しでも出てしまうと失格になる。
ジャンケンを出す時、攻撃をする時、防御で体を後退させる時は、自分の足の位置に気をつけなければならない。
よっしゃぁぁ、気合入るなぁ!
白いバトルスペースの上に立つと、気持ちが高ぶってくるのが分かる。
「両者セット!……RPS GO!」
鈴木先生の声に、俺は右脇腹に控えていた右腕を素早く手前に差し出した!
新山がグー、俺が出したのもグー。あいこだ!
ほぼ同時に、2つの電光掲示板には「Draw」と点灯された。
「「クッ!ダメか!」」
前に動き出した体を止める。
新山も俺も、悔しい気持ちが声に出てしまった。
あいこの時に相手を攻撃してしまうと、その時点で失格してしまう。
自分の出した手が勝った手なのか負けた手なのか、瞬時に判断しないといけない。
両者の電光掲示板から「Draw」の文字が消え、「Replay」と点灯された。
「ドロー、リプレイ」
鈴木先生の声で、俺たちは姿勢を戻した。
「両者セット!……RPS GO!」
鈴木先生の声に、俺は右腕を素早く手前に差し出す!
俺が出したのはチョキ、新山は……チョキ。あいこだ!
先ほどと同じく、2つの電光掲示板に「Draw」と点灯される。
「クソッまたあいこか……」
同じ結果に、思わずイラっとしてチッと舌打ちをしてしまった。
そんなに俺と新山は気が合うのか?いや、俺も新山もBLでは無いはずだ!
「ドロー、リプレイ」
鈴木先生の声と同時に、2つの電光掲示板にまた、「Replay」と点灯された。
『落ち着け……確かトモが言っていたな……あいこの確立は1/3で、それが次で3回目だから、1/3×3回で次のあいこの確率は1/9だ!(正解:1/27)』
「両者セット!……RPS GO!」
鈴木先生の声で、俺たちが出したのは――
新山がチョキ。そして俺は……グーだ!良し、俺の攻撃権だ!
俺の電光掲示板に「Attack」と点灯される。
「うりゃあっ!」
素早く、ジャンケンで出したグーを!
新山の額目掛けて!!
素早く叩き込む!!!
「お、おお……」
俺の拳が目の前に飛んできた新山は動くことが出来ない!
ガッ!!! ブーーーッ!!!
俺の電光掲示板から大きな機械音が流れた。
額に一撃!俺の勝利だ!
白の電光掲示板には「Hit!!!」と点灯されている。
「ヒット、勝者、白、三上有利!」
「よっしゃああぁぁぁ!」
俺は大きく右手を降り上げた。
「試合終了。両者、礼!」
「ありがとうございました」」
鈴木先生の声で、俺と新山は互いに頭を下げて、敬意を払う。
これも『RPS BATTLE』の決まり。
少し浮かれた気分になったが、これはまだ予選だ。気をつけないと。
ふと、A組の方を見ると、ちょうど防具をつけたトモがバトルスペースに入っていった。