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大広間に入ると――
右奥「A組バトルブース」、左奥「B組バトルブース」、右手前「C組バトルブース」左手前「D組バトルブース」と、書かれた大きなホワイトボードが置かれている。
その4箇所には、模擬試合と同じ白色と青色のバトルスペース。
それぞれのバトルスペースの側には電光掲示板とノートパソコンが1台ずつ、模擬試合の時と同じような位置で置かれていた。
D組のバトルブースを見ると、鈴木先生がホワイトボードに何か書かれた紙を貼っていた。
「先生、これ何ですか?」
「これは『RPS BATTLE』のトーナメント表だ」
「ふーん、どれどれ……って先生、何で、根本の名前が!?」
根本は「書記エントリー」だからバトルに関係ないはず!
「これも『運も実力のうち』と言われる理由だ」
鈴木先生がニカッと笑いながら話始める。
「この『RPS BATTLE』はクラス全員がトーナメントに記載される。そして、その中からエントリーしていないものが『棄権者』となるんだ」
「じゃあ、組み合わせと棄権者によっては試合をしないでクラス選抜に選ばれるってことですか!?」
「まあ、全く試合をしない可能性は低いけどな。だが、それがこの『RPS BATTLE』の仕組みなんだ」
鈴木先生はそう言うと、トーナメント表から生徒会長選抜にエントリーしていない生徒の名前に黒ペンで×をつけていく。
「先生、このトーナメント表って先生が作ったんですか?」
「いや、これはコンピュータでランダムに出席番号が表示されたものを使うんだ」
「もしかして……これも『運』なんですか?」
「まあ、『運』と言えばそうだろうな。鈍くさいと対戦するか、俊敏なのと対戦するのか。そういえば三上、『身体検査』は終わったのか?」
「あっ、ヤベェ、スルーした」
「失格になるぞ、早く行け」
鈴木先生の言葉で、急いで身体検査が行われている場所に戻った。
防具服に着替えたら1回目の身体検査を受けなければならない。
ここで、『RPS BATTLE』に関係ないモノを持っていることが分かると、有期の停学処分になるそうだ。
2列に並んで順番を待つ。身体検査を行っているのは天堂先生と佐藤先生だ。
「三上有利、そこに立ちなさい」
ハンド式の金属探知機のようなモノを持った佐藤先生に声を掛けられた。
先生の指示された場所に行き直立すると、先生は腕を伸ばして、俺の頭上から足元に向かってドーナッツ型をした探知機の先端をゆっくりと動かす。
ウイイィィィンと小さな機械音流れ、探知機を持っている先生の手元が薄く緑色に光っている。
「よし、次はそのまま両方の手の平を出しなさい」
言われた通り、手のひらを上にして自分の肩の高さまで真っ直ぐあげる。
両手で握手をするような姿勢だ。
先生の左手が俺の手のひらを軽く押したり、指を摘んだりしていく。
手のひらを揉まれているような感覚に気持ち良さを感じた時――
俺の隣にした男子生徒の方からヒュンヒュンヒュン! と、サイレンのような高い音が鳴り響いた。
その音に、広間にいた誰もがその音のした方に目を向ける。
「C組、夏木大吾。これは何ですか?」
そこには夏木大吾と呼ばれた俯いた生徒と、厳しい顔をした天堂先生が立っていた。