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「男子は全員、こっちの会場で着替えなさい」
先生の合図で、男子生徒会長に立候補している男子達が一斉に対戦が行われる会場の右隣にある広間に移動した。
広場に入ると、正面にスチール製のハンガーが何台も並んでいる。
そのハンガーには、白い防護服が何十着と掛けられていた。
防護服は左の方から右に行くに従って丈の長さが長くなっている。
どうやらサイズ順に並んでいるようだ。
そしてハンガーのある両横、左右の壁にはデパートにある試着室のような簡易の個室が何台も並んでいた。
防具服を選んだ生徒はあそこで着替えるらしい。
「それでは名前を呼ばれた順に防護服を着用してください」
名簿を持った先生が次々と名前を読み上げていく。
呼ばれた生徒は、ハンガーにかけてある防具服の前に行くと、手前に書かれているサイズ表を参考に防具服を選んだ。
そしてそれぞれ着替えを行う為に個室に入っていく。
着替えが終わって個室から出てきた生徒は、先生の誘導で対戦が行われる大広間に戻っていった。
「次、三上有利!」
「ハイッ」
名前を呼ばれた俺は、まっすぐ防具服が掛けられているハンガーへ向かう。
毎年借り出されている防具らしいが、きちんと手入れされているようで、どの防具服も新品同様に綺麗だ。
「よし、これだ!」
サイズ表を参考に一着の防具服を手に取ると、空いている試着室のような個室に入った。
個室は畳1帖と同じくらいの空間。
目の前には全身が映せる長い鏡があり、その下には着替えを入れるカゴ。
鏡の横には、防具服の着替えが写真入りで説明されている紙が貼ってあった。
「ふーん、どれどれ」
俺は説明書に目を通すと、着ていた上着を脱いで上下とも下着1枚になる。
「先ずは靴下だな」
白い靴下は膝下まで届くスクールソックスのような物。
薄くて伸びがいいので履きやすく、肌にピタッとなじむ。
「次はズボンか」
ズボンの全長は足首から鳩尾まで届く仕様になっている。
動いてもずり落ちないようにゴムでできたサスペンダーがついている。
膝と股の関節に当たるところには「ひだ」があって、スムーズに動けるようになっていた。
「そして……プロテクターと」
プロテクターと言っても、固い素材ではなく、ズボンと同じような薄くて 伸縮性のある白い布地で出来ている。
長袖のタートルネックのようなデザインで、股関節までの長さがある。
左脇に長いファスナーがあり、そこから脱ぎ着が出来る。
このプロテクターも肩と肘の関節部分には「ひだ」があり、ズボンと同様に体を動かしやすい。
「フゥー、最後はグローブか」
グローブは肘までの長さがあって、肘下で締められるように小さなベルトが付いている。
グローブといっても革で出来ているゴツイ感じではない。
薄くて滑らかなゴムと布を合わせたような不思議な素材。
素手のような感覚は着けている事を忘れそうだ。
「この感覚……トモの家で悪戯して履いた手術用手袋みたいだ」
全部の防具を身に着けたが、どの防具も薄くて軽いので動きやすい。
説明書によると、頭につけるグローブは安全を配慮して対戦直前に先生が着けると書いてある。
着替えを終えた俺は、脱いだ服を袋にしまってから、個室から出る。
そして側にいた先生の指示で対戦会場となる隣の大広間に戻って行った。