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「ユウ、おはよー!」
自宅を出てしばらく歩いた、公園に面している道路脇から掛かる。
「よう、トモ」
俺は軽く右手を上げて、その声に答えた。
俺に声を掛けてきたのは、幼稚園からずっと同じ学校に通っている俺の親友、天樹友助。
身長は170cmくらいの手足の長いスラっとした体型。黒い短髪で、キリっとした顔。どことなく品のある優等生といった感じのイケメンだ。
俺はコイツのことを「トモ」と呼んでいる。
そしてトモは俺、三上有利のことを「ユウ」と呼んでいる。
俺もトモも身長と体型は同じくらい。
黒髪で短髪のトモに対して、俺は茶色の地毛を長めのシャギーにしていて、サイドの髪をヘヤピンで止めている。
俺は髪と瞳が茶色で、はっきりした顔立ちなので、小さい時はよくハーフに間違えられた。よくある話だ。
しかし、最近はなぜか「チャラ男」と、よく言われてしまう。まったくもって失礼な話だ。
「僕たちいよいよ高校生だね」
「だな。今朝なんて、間違えて反対方向の中学校に行きそうになったぜ」
「アハハッ、なんか分かる」
トモは少し緊張した顔で話しかけてきたが、俺の話を聞いて顔に笑顔を浮かべた。
そう、公園前で待ち合わせしたトモと俺は今日から同じ私立幸命高校に入学する新1年生。
公園から少し歩いたところにあるバス亭で高校行きのバスに乗り、揺られること20分。
ここ、札幌の4月は大きな道路の雪は解けたものの、日陰には黒く煤けた雪が残っていてまだはだ寒い。
うーん、ブレザーの下にベストを着れば良かったな。
「結構、バスの中混んでいたな」
「そうだね。僕、知らない女の子に足踏まれたよ」
「俺もお尻になんか当たっているなと思ったら、知らない子のスマホだった」
「うわあ、そのスマホで話したくないや」
二人で話しながら道路を歩いていると、やがて目の前に俺たちが入学する私立幸命高校の校舎が見えてきた。
校門には紅白の造花が飾られ「祝 幸命高校 入学式」と書かれた縦長の看板が、門柱に針金でくくるように立てかけられている。
「ユウ、あそこの掲示板にクラス発表が張り出されているよ」
校門の入口に入ったところで、トモが校舎玄関から少し離れた右側に出来ている人溜まりを指さす。
「おーどれどれって結構混んでいるな」
「皆、大体同じ時間で来ているからね」
俺は少しドキドキしながら右端から「1年A組」と書かれ、「1年D組」まである、クラス発表の名簿から自分の名前を探し始めた。