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「各自、自分の部屋に入ったら荷物を整理しなさい」
ホテルの玄関前に整列した俺達はB組担任、佐藤先生から説明を受けた。
「えー、夕食は6時、レストランに集合……7時に3階の大広間に集合……以上」
「俺の部屋は855室か」
ホテルのエレベータに乗って8階で降りた俺は、宿泊する部屋に向かった。
「三上、待ってたぜ」
「悪い、エレベータ混んでいたんだ」
部屋の扉の前に、同じD組の森皇紀と矢田雄二立っていた。
俺達3人は2日間、このホテルの3人部屋で寝起きを共にする。
「良い景色だな~」
「あれが『旭岳』か?」
「まだ雪が積もっているな」
ホテルの8階の窓からは旭川市内と、遠くの山々が見える。
「おう、森、三上、早く荷物整理しないと夕食に時間になるぞ」
「矢田、悪りぃな」
俺と森は窓から離れると、持って来た荷物を所定の場所に片付けていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「全員揃いましたね。それでは頂きます」
「「「いただきまーす」」」
「ぬあぁ、美味しそう!」「マジ、お腹空いたぁ」
夜6時、C組の東方先生の掛け声で俺達1年生に夕食が始まる。
テーブルの上に置かれたオカズは食べきれないほど。しかもどれも美味しい。
「「「ごちそーさまでした」」」
約30分後……。ほとんどの生徒が食事を終えた。
「よーし、全員食べ終わったな?これから一旦、部屋に戻ったら直ぐに3階の大広間に集合しなさい」
生徒の食事が終わったのを確認した、鈴木先生が大きな声で全員に話しかけた。
「7時から、『クラス選抜 PRS BATTLE』を開始する。全員遅れないように、以上!」
「「「ハイッ!!!」」」
先生の指示でA組から順にレストランを出て、各自の宿泊部屋に戻っていった。
「いよいよ『PRS BATTLE』の開始かぁ~」
「何、ユウ、もしかしてビビッてる?」
「森、お前は緊張しないのか?」
部屋に戻って、身支度をしながら俺と森は牽制しあう。
同室の矢田は「会計テスト選抜」にエントリーしているので、俺たちのやり取りを黙って聞いているだけ。
「テスト選抜」は校内の密室で行われる為、今回の宿泊学習では見学者となるからだ。
「森も三上も応援しているから頑張れ」
「「ぬおぉぉ、矢田くん、優し~い」」
「お前らキモイ。シッシッ!」
アホなやり取りをしながら、俺達はホテル3階の大広間に向かっていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「これから行われる『クラス選抜 PRS BATTLE』では各組、男女それぞれ4名、計32名が次に行われる『学年選抜PRS BATTLE』に進むことができます」
大広間に集まった生徒全員は体育座りをして、目の前に立っている天堂先生の話を聞いていた。
「今日は『クラス選抜 PRS BATTLE』の予選を行い、各組、男女それぞれ8名を選抜します。8名は明日行われるクラス別の決勝に参加することになります。よろしいですか?」
「「「ハイッ」」」
先生の話を聞くうちに、だんだんと顔が引き締まってくるのが分かる。
「生徒会長にエントリーしたものは、これから隣の部屋で防具服に着替えてもらいます。参加しない生徒は見学席に移動します」
「「「ハイッ」」」
「では、男子生徒会長エントリー者は佐藤先生に。女子生徒会長エントリー者は東方先生について行きなさい」
こうして生徒会長エントリー者は『RPS BATTLE』 を行う時に必要な防具服を身に付ける為に、男子は佐藤先生の後を、女子は東方先生の後を付いて大広間から隣の小広間へ移動した。