5-2
「俺が時実さんと同じ係になります!」
「いや俺が」「いや俺が」「いや俺が」「いや俺が」「俺も」
「ああーっ、小学生か、お前らは!!」
宿泊先に向かうバスの中で行われるレク係り。
女子のレク係りに、ミクが任命された。までは良かったのだが――。
ミクと同じ係をやりたがる男子生徒が殺到して、さすがの鈴木先生がキレた。
「このままだと係が決まらん!男子のレク係りは三上にする!」
「ちょっ待ってください、なんで俺がっ!?」
「時実に“全く興味が無い”のは、お前だけだ」
全く興味が無いという部分を強調しながら、先生は俺を男子レク係に指名……いや命令した。
「ええーっ」「ええーっ」「ええーっ」「ええーっ」「ええー!」
先生の強行指名に、一斉に残念そうな声を上げる男子共。
「ああーっ、うるさい! お前らは猿か!? チンパンジーかっ!?」
結局――俺は関わりたく無いミクと同じ係になってガックリ肩を落とした。
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「あいつらもユウのように、時実さんに興味の無い振りをすれば良かったのに」
俺がミクに対して気があると思っているコウジがニヤッと笑って話しかけてきた。
「だから、俺はホントにミクとは全然関係無いんだって!だったらコウジにレク係りを譲ってやるよ」
「いやいや、時実さんとレク係りしたなんて彼女にバレたら別れ話になりそうだからさっ」
「学校が違うんだろ。黙っていればバレねぇだろう?」
「あーっ、俺の彼女の友達がC組にいるんだよぉ、この間も時実さんと実習で一緒に荷物運んだだけだのに、それをメールで知った途端、3日間口を聞いてくれなかったんだ~ハァァッ」
コウジは少し下を向きながら、左右に顔を振る。
しかし、その口元はしっかり緩んでいる。
なんだかんだ言って、やきもちを妬かれて嬉しそうだ。――ムカツク。
そんなやり取りをしていた時、教室の扉がガラガラッと音をたてた。
「皆さん、おはようございます」
「「「おはようございますっ」」」
コウジのリア充ぶりをしっかり聞かされていたところで、先生が教室に入ってきた。
「今日から2泊3日の宿泊学習です。この宿泊学習の目的は交流を深めて……」
「時実さん、俺と交流を深めよう!」「俺も」「俺だって」
先生の話している途中で男子生徒が邪魔発言をする。
「やかましい!!交流は交流でも、その交流じゃない!!!」
42才独身の鈴木先生がキレた……。
「もう、お前ら先に行け~、時実は先生と後で向かう」
「先生ズルイ」「ズルイ」「ズルーイ」
男子生徒はブツブツ文句を言いながら教室を出て、「1年D組様御一行」と書かれた、校門前に泊まっているバスに向かった。