5-1
「結構な荷物になったね」
「たった2泊3日の宿泊学習なんだけどな」
季節はゴールデンウィークが明けた5月中旬。
俺とトモは今日から始まる宿泊学習に行くため、キャリーバックに着替えや荷物を入れて学校に向かった。
一年生が対象の宿泊学習は、旭川を中心に道央を旅する。
他の高校ならクラスの友人同士の楽しい旅行になるんだけど。
しかし、ここ幸命高校では、宿泊学習に『クラス選抜 RPS BATTLE』が開催される。
いよいよ勝負の始まりだ。
勿論、俺もトモも「生徒会長選抜」にエントリーしているが、
勝ち残った生徒にとっては楽しい旅行になる一方。
負けてしまった生徒にとっては屈辱の旅だ。
涙の思い出にならないように頑張らなくちゃ!
「トモ、絶対負けんなよ」
「う、うん……すごい気合が入っているね」
トモは俺の剣幕に少し押されたようだ。
俺達が学校に着くと、校門の前に数台のバスが縦列に止まっていた。
「これが今日の宿泊学習で俺達や他の奴らが乗るバスだな」
「やっぱりクラス毎に乗るみたいだね。フロントガラスの上にクラスが表記されているよ」
俺とトモはバスをちらっと見た後、玄関で外靴から上靴に履き替え自分の教室に向かう。
「それじゃあトモまた後でな」
「うん、それじゃあ僕は自分の教室にいくから」
そんな会話を交わして俺はD組にトモはA組と、それぞれの教室に入っていった。
「おはようー!」
「おっユウ、おはよ~」
教室にはすでに何人かの同級生が登校していた。
俺は挨拶を交わしながら荷物を教室の後ろ側に置いて、自分の席に座る。
「コウジ、宿泊学習の詳しい説明は今日だよな?」
「当たり前だろ!今日じゃなかったらいつ説明するんだよ!」
事前説明はあったが、より詳細な説明は出発前。つまりこれからだ。
夜中までゲームをしていてすっかり寝不足な俺。
目の前の席に座っているコウジに天然ボケな発言をしてしまい、突っ込まれてしまう。
そうだよな。今日出発するのに、今説明が無かったらいつすればいいんだろう。
自分のアホな発言に思わず苦笑してしまう俺。
「おいおいユウ、しっかりしろよぉ。お前バスの中でのレク係りだろ?」
「ああそうだったな。うっかりしている場合じゃなかったな」
「そうだよ。ユウがボーッとしたら、時実さん可哀想だろ?」
「その名を出すな。俺がレク係りになったのはアイツのせいだ」
コウジの口からミクの名前が出て、さっきまで寝ていた脳が覚醒した。
そう、2週間前の5時間目。宿泊学習の役割を決める話し合いが、俺にとって悪夢の始まりだった。