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「高峰さん、お久しぶりです」
「あらぁ、トモくんお久しぶりぃ。どう、学校は慣れたかしら?」
ん?高峰?この舌足らずな話し方にちょっとエロな雰囲気とプルンプルン……ま、まさか!?
「も、も、もしかして、保健室の高峰先生ですか!?」
「ハァーイ、もしかしなくてもぉ、保健室の先生ですよん☆」
高峰先生は俺の方に顔を向けると、片目を軽くつぶってウインクをした。
なんで直ぐに高峰先生だと分からなかったかと言うと――。
入学式以降、多数の男子生徒が「先生、お腹が痛くて」「先生、俺、熱っぽくない?」などと保健室に駆け込んだ。
その為、高峰先生はほとんど保健室に篭ったままだったからだ。
「な、何で、高峰先生がここに付き添いでいるんですかぁ?」
「んー、ウフフ。どうしてだと思いますかぁ?」
俺の問いかけに、色っぽい笑みを浮かべて誤魔化す先生。――ってそんなこと分かる訳ないだろうが!?
「高峰先生は市内の国立看護大学卒業でお父さんの病院で働いていたんだ」
「あーんもう、トモくん。直ぐネタバレしちゃんダメェ」
「あ、すいません。つい」
トモの返答にちょっと拗ねたような顔を見せる先生。ってか、トモも少しは照れろ。
まてよ。看護大学出で、病院に勤務ってことは、白衣の天使だったのか!?
こんなエロい白衣の天使がいていいのかよ?
「えぇ、マジ!?トモ、嘘や偽りを言ってはいけないぞ?」
「嘘じゃないよ。高峰先生は看護大学在籍中に看護士と教員免許を取った才女なんだよ」
いやいや、こんな色気満載の先生が、難関の看護学校を優秀な成績で卒業したとは!なんかの間違いじゃない?
そして、そんなことより――。
「で、なんで先生がミクの母さんの付き添いをしているんだぁ?」
「先生ぇ、時実さんの担当看護士だったんですぅウフッ」
再びの俺の質問に今度はあっさりと答えてくれた先生。
「でも、せっかくのお休みなのにどうして付き添いをされたのですか?」
「付き添い看護はボランティアよぉ。看護士になって初めて担当したのが時実さんだったのぉ」
「高峰先生は立派ですね。僕も、もっと見習わないと……」
「あらぁ、トモくんが褒めても何も出ないわよ~」
トモの褒め言葉にフフフと、嬉しそうな顔をする先生。
「週末にデートする彼氏がいなかったってことですよね~、それって」
軽ーい気持ちで話したつもりだったが。
「…………三上くぅん……コロスゾテメェ」
「ヒィィィィッ!?嘘です、冗談です、軽ーい気持ちです、悪気は全くありません!」
それまで緑のレオタードを着た女性怪盗のような色っぽい先生が、俺の一言でメドゥーサのようなオーラを噴き出してきた。
その一転した雰囲気と、先生の口から飛び出した聞いたこともない低い声に、俺は背筋に寒いものが走り先生の冷たいオーラがこれ以上届かないように必死で謝った。