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自宅兼整体クリニックと道場が隣接している玄関の前にはグレーのワゴンが横付けされていた。
ワゴン車の側面と後ろには「天樹介護タクシー」とペイントがされていている。
そのワゴン車の運転席から中年の男性が降りてくると、男性は助手席側に周り、ゆっくりと後部座席のドアを開けた。
男性は先ず折りたたまれている車椅子を取り出すと、形を整えながら地面に置いた。
そして後部座席の中に入っていくと、中にいた人となにやら話している。
後片付けを終えた俺も玄関先に向かうと、ユメは細かくピョンピョンと跳ねながら、早く、早くと、母親が出てくるのを待っていた。
「ハイ、じゃあゆっくり降りてください」
前方を男性に、後方を付き添いしてきた女性に支えられながら、ゆっくりとミクとユメの母親・時実春香が降りてきて、車椅子に腰掛けた。
ミクとユメの母親は顔色こそ良かったが、全体的にほっそりしていて、髪の毛はサイドで一つにまとめている。
寒くならないように、紺色のニットでできた服を重ね着していた。
後方にいた女性が母親の乗った車椅子を少し動かすと、男性が後部座席の扉を閉めて、手に持っていた書類に何やら書き込んでいる。
「ではゆっくり楽しんでくださいね」
男性は母親と女性に話しかけると運転席に回り、車に乗り込むと静かに発進させどこかへ走り去って行った。
「時実さん、お家に入りましょうね」
女性が母親に話し掛けながらゆっくりと車椅子を動かし玄関の方に向かう。
「お母さーん!お母さーん!」
待ちきれなかったのか、ユメは玄関から飛び出すと車椅子に座っている母親の膝に抱きつく。
「ユメ、ただいま。良い子にしてた?」
「うん、あのね、今日ね、ユメ、いっぱい、手伝ったんだよ」
ユメの頭を撫でながら優しそうに微笑む母親に、ユメは精一杯自分のことを報告した。
「もうユメ、気持ちは分かるけど外は寒いわ。早くお母さんと家に入るよ」
玄関から出てきたミクが仕方ないなぁという顔をしながらユメに話しかける。
「そうね。お家入ってからいっぱいお話しましょう」
「ハイなぁです!うんと、お家の中で待っているですぅ!」
母親の言葉に頷いたユメは、立ち上がると玄関の中に入って行った。
その軽やかな動きにユメの嬉しさが溢れているようだ。
「じゃあぁ、私達も入りましょうねぇ、時実さん」
車椅子を押している女性が、優しく母親に話しかける。……って、この人どっかで見たような。
女性は静かに車椅子を押し玄関に入ると、母親の履いていた靴を脱がせて廊下にあったスリッパに履き替えさせる。
俺は甲斐甲斐しく母親の世話をするパーマのかかった髪を後ろでポニーテールに纏め、クリーム色のセーターにスリムジーンズをはいた若い女性の胸元に目がいった。
んー、セーターを着ていても分かるこのプルンプルン。どっかで見たことあるよな?
こんな綺麗なお姉さんは、一度見たら忘れないはずなんだけどな。
首を捻って考えている俺の横に、トモがスッと現われた。