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ユメは身長120cmくらい、腰までの長い髪をポニーテールにして一つにまとめている。
ミクと似ていると言われるが、俺から見るとユメの方が断然可愛い。
誤解が無いように言っておくが、俺はロリコンじゃないぞ。ユメが好きなんだ。
今日のたこ焼きを作る時もユメは俺の側にいて、たこ焼き粉を溶いてくれたり刻んだ具材を器に入れてくれたりと一生懸命働いてくれた。
食器棚に背中をくっつけてコーラをコクンコクンとゆっくり飲むユメの仕草を俺は微笑ましく見つめる。
「ユウ兄ちゃんもお父さんの道場開きの為にありがとですぅ」
「いいって。時実の親父には昔からお世話になっているし……それよりそろそろ来るんだろ?」
「うん!お母さん6ヶ月ぶりに帰ってくるんですぅ」
俺の問いかけにユメが嬉しそうな顔をした。
ミクとユメの母親は体が弱くて、ユメが3才くらいの時からほとんどを病院ですごしている。
俺とトモが道場開きの式典の手伝いをした理由がこれだ。
ミクの父親は式典自体の準備に忙しいし、ユメに火を使った料理をさせるのは危なっかしい。
しかし、いつも母親の代わりに家事をしているとはいえ、ミク一人で切り盛りするにも限界がある。
最初は手伝いをするつもりではなかったのだが、インドに住んでいる両親に道場開きのことを話したところ。
「ユウ、あんた、料理だけは無駄に得意なんだから手伝いなさい!」
と、電話越しに言われてしまい、結局トモも誘って手伝うことになったのだ。
ってか無駄に得意って息子に対して言うことか?
ちなみにミクの母親が入院している病院はトモの父親が院長をしている天樹総合病院だ。
時々病院から一時帰宅をしていたのだが、道場の新築移転で引越しに追われていたので、落ち着くまで帰宅を控えていたらしい。
重たい荷物整理や片付けで出る埃は体には良くないからな。
とはいえ、大好きな母親となかなか自由に会えなかったユメにとっては、今日の母親の一時帰宅は嬉しいだろう。
俺もユメの喜ぶ顔を見ることができたので、今日は手伝って良かったと思った。
その時、家の前に大き目のワゴン車が止まる音がして、ユメが台所にある窓から外を覗いた。
「あーっお母さんですぅ、迎えに行くですぅ!」
「おう、いっぱい甘えてこい!」
「ハイなぁ!!」パタパタパタ……。
ユメはたこ焼きの粉がついているクマのイラストが描いてあるエプロンをつけたまま、玄関の方へ走っていった。
うん、やっぱりミクとは違って可愛いヤツだ。
ちょっと顔がにやけながら、俺は台所の後片付けを始めた。