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ピコピコピコ……
ベッドの棚の目覚まし時計から規則正しい高めの機械音が鳴り響いた。
「……うーん、まだ眠いんだよぉ……」
俺は呟くような声を出しながら、水色の掛け布団から頭に手を伸ばす。
「ハイハイ、今、起きますよ」
目覚まし時計に話しかけながら停止ボタンを押すと機械音が止まった。
ピロピロピロ~ン
今度は枕元に置いてあったスマホが音を奏でる。
「なんだぁ?」ピッ
スマホ画面に表示されたメールを読んだ。
「有利、遅刻はするなよ。父母」
そこにはたった1行のあっさりしたメッセージ。
「三上家長男、有利、只今起きました。夜中なのにモーニングコール、サンキュ!」
俺は、インドにいる両親にメッセージを送り返した。今のインドは夜中の2時~3時くらいだ。
送信を確認した俺は体を起こしながら手で布団を押し上げ、ベッドから降りる。
そしてベッドと対面の位置にあるタンスから服を取り出し向かった先は浴室のある脱衣所。
持ってきた着替えを側にあった籠に入れると、着ていたパジャマは脱いで洗濯機の中に入れる。いつもと同じ流れだ。
そして浴室の扉を開け中に入ると蛇口を捻り、全身に暖かいシャワーを浴びた。
「フーッ、気持ちいい」
シャワーを浴びているうちに、寝ぼけていた頭がさっぱりする。
十数分後――脱衣所で白いワイシャツにグレーのズボンに着替えた俺は、髪をドライヤーで乾かしながらセットしていく。
仕上げにサイドの髪を気に入っている水色のヘアピンで止めた。
こうして支度が終わった俺は、台所に入ると冷蔵庫から袋に入っているウインナーパンと牛乳を取り出す。
牛乳をグラスに注ぐと、パンと牛乳を持って、居間にあるソファに座り、ソファの目の前、テーブルの上にあるリモコンを持ってテレビをつける。
画面には白髪で日に焼けた顔のキャスターが厳しい顔をしながらニュースを伝えている。
俺はテレビの画面を観ながら、一人静かに食事を食べていた。
今、この家には俺しかいない。
俺の父親は外資系の商社に勤めていて、3月にインドに海外赴任になったばかり。
本当は父親が一人でインドに行く予定だったが、母親が「パパと本場のインドカレーを食べたいの」と言って、一緒にインドに旅立った為、俺は現在マンションで一人暮らしをしている。
とにかく仲が良いと言うか、どんだけバカップル夫婦なんだ、俺の親。