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「1年B組は佐藤憲助先生からお願いします」
「佐藤憲助です。教科は国語を担当、卓球部の顧問をしております――」
明るいグレーのスーツを着て、口と顎のひげがかなり伸びた濃い顔立ちをしている佐藤先生がB組の生徒の名前を読み上げていく。
「1年C組は東方一郎先生からお願いします」
「東方一郎です!教科は数学!テニス部の顧問です!――」
今度は紺色のスーツを着た、20代前半に見える若々しい先生が壇上に上がる。東方先生は少し早口でC組の名前を読み上げていった。
そして最期に俺達D組の鈴木先生が壇上に上がり、名簿を読み上げていった。
「――以上4クラス、120名の入学をします」
鈴木先生が壇上から降りたところで、女子生徒の声がマイクから流れた。
「続きまして――学校長挨拶」
すると壇上の上に、白髪混じりの背はそれほど高くは無いが背筋がきちんと伸びている男性。
黒のスーツに白いネクタイを着けている男性は、ここ幸命高校の校長、大柳創司。
優しそうな顔は校長というより、近所のおじさんみたいな親しみやすい感じがする。
大柳校長は俺達新入生に向かって深々と頭を下げてから、壇上にあるマイクに近づいた。
「新入生の皆さんようこそ幸命高校へ。皆さんが素晴らしい高校生活を送れることを願っています――」
大柳校長は俺たち新入生を心から歓迎しているような穏やかな笑みを浮かべて、歓迎の言葉を話していった。
「――以上、祝辞として述べさせて頂きました」
天堂先生とは違う、落ち着いたバリトンボイスで挨拶を終えた大柳校長は、一歩下がり深々と頭を下げてから壇上を下りた。
「続きまして、新入生代表挨拶。1年A組天樹友助くん」
「ハイ!」
トモはさっそうと自分の椅子から立ち上がると、スタスタと歩いて壇上に上がると、来賓のいる右側の席に深々と頭を下げてから、マイクに顔を寄せた。
「本日は私達新入生の為に式を挙げて頂き、感謝しております――」
幼稚園の頃から代表挨拶を何回もしているせいか、分かりやすいスピードで、はっきりを話すトモ。
カンペも見ずに話す姿に、本当にコイツはスゴイ奴だなと思う。
「首席だって」「意外とかっこいいね」
トモを見つめる女子生徒達のひそひそ声が聞こえてくる。
俺より前の席に座っているミクの方に目を向けた。
ミクは周りにいる女子の声など聞こえないくらい真剣にトモの挨拶に聞き入っているようだ。
「天城病院の息子だって」「じゃあ彼女になれたら院長婦人かな」
中には、ウヘェこいつら最低~、と思うような会話をしている女子生徒達もいた。
「――勉学や部活動など様々なことに取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました」
挨拶を終えて深々と頭を下げたトモに会場中から暖かい拍手が送られた。