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「只今から私立幸命高等学校の入学式を開会します」
体育館のステージ前方から1年生、2年生、3年生と、学年とクラス毎に椅子を並べて座っている。
生徒の席から少し離れた右側の少し斜め前向きに並べられた席には来賓客。
左側の席にはこの高校の先生方がスーツなどの正装をして座っていた。
体育館の壁全体には紅白の布が貼られている。
ステージの後ろの方にはエンジ色の緞帳が下りており、緞帳の上の方には「祝 幸命高校入学式」と横書きで書かれた看板。
看板の下には国旗と校章を描いた旗が並んで掲げられていた。
「始めに国歌斉唱。全員ご起立ください」
体育館の中に居た人達が全員起立をすると、厳かな音楽が流れ出す。
「「「君が代はー……」」」
ほとんどの人達が声を揃えて歌いだした。
体育館の左側、ステージ下のマイクで話しているのは3年生の女子。
なんで3年生だと分かったのか?
この幸命高校の制服は、紺のブレザーに男子はグレーのズボンで女子はグレーのスカート。
ただし、生徒の学年が分かるように、1年生男子が赤いネクタイで女子は赤いリボン。
2年生男子が緑のネクタイで女子は緑のリボン。
3年生男子が青いネクタイで女子は青いリボンを着けることになっている。
司会をしている女子のリボンが青色だったので、3年生だと分かったんだ。
「続きまして校歌斉唱――」
体育館の中にピアノ演奏が流れると、2、3年生の席の方から歌声が聞こえてきた。
「「「白銀を乗り越え、空を見上げよと――今、この時――」」」
演奏と歌声が終わると、体育館の中が静かになった。
「ご着席ください。――続きまして入学許可」
マイクから流れる指示で、全員がそれぞれの椅子に座り直した。
「1年A組は天堂理才先生からお願いします」
「素敵~」「カッコイイー」
体育館のステージの上に一人の男性が上がった。
その姿を見た、体育館の中にいる女子生徒達や来賓の女性達からため息のような声が漏れた。
そこには身長は180cmくらいの長身で手足の長い、すらりとした体型。ダークグレーのスーツを着た20代後半のモデルのような先生が立っていた。
何、このイケメン?反則じゃねぇ?
「天堂理才です。教科は英語を担当、将棋部の顧問をしております。では名簿を読み上げます。――天樹友助。伊藤海司……」
マイクから流れる声は甘く響く低音で、体育館の中を柔らかく包み込んでいく。
名前を読み上げられているA組の女子席の方からは、天堂先生が名前を読む度に「キャッ」と嬉しそうな声が聞こえてくる。
うん、やっぱり。入試点に合わせた、A組の、A組による、Aランクの先生なんだな。
人垣の隙間からステージの下で名簿と睨めっこをしている鈴木先生を眺めながら痛感した。
「――以上、A組30名」
名簿を読み終えた天堂先生はマイクから体を一歩後ろにずらすと、軽く頭を下げた。
天堂先生がゆっくりと壇上から降りると、女子生徒の落胆したため息が流れた。
その様子にまだ入学初日だが、男として敗北感を感じてしまう。くっそぉぉぉ!