エピローグ3
「それではただいまから終業式を始めます。校長先生挨拶をお願いします」
女子生徒会長の十文字南の声がマイクから流れる。
現生徒会役員の大きな仕事は今日まで。冬休み明けからは新生徒会役員への引継ぎ業務だけだ。
「皆さん、この10ヶ月間お疲れ様でした。現生徒会の皆さん、ありがとうございます。そして新生徒会の皆さんは冬休み明けから頑張ってください」
体育館の壇上にいる校長先生の後ろに、現生徒会役員が並び、一人一人挨拶をしていく。
最後に挨拶をした男子生徒会長の大倉北斗は涙声で『RPS BATTLE』を勝ち抜いた喜びと生徒会長の重圧を話した。
体育館にいる生徒達から拍手を貰った役員達は何回も頭を下げながら壇上から降りていった。
生徒会役員達が全員降りたのを確認した校長先生が再びマイクの前に立った。
「それともう一つ、大変嬉しいニュースがあります。天堂先生、壇上に上がってください」
濃いグレーのスーツをピシッと着こなした天堂先生が壇上に上がった。
「えー、なになに」「なんだろう?」
天堂先生の姿に体育館にいる女子達から小さな声が上がる。
壇上に上がった天堂先生は校長先生に軽く一礼をした後、校長先生の斜め後ろに直立で立つ。天道先生を見つめる校長先生は満面の笑みを浮かべている。
「この度というか、昨日ですね……天堂先生が結婚をされました」
「「えー!」」「「きゃー!!」」「「うそー!!!」」
校長先生の口から飛び出した言葉に、体育館の中が騒然となる。
ぬおおおぉぉぉぉ!!! 天堂先生が、結婚だと!! こんなイケメンをゲットしたのは誰なんだ!?
壇上にいる天堂先生は少し顔が赤くなっているように見えた。
「皆さん、驚きましたよね。私も驚きました」
校長先生の嬉しそうな声が続く。校長、驚くよりはしゃぎすぎじゃねぇ?
「驚くことはまだ続きます。……天堂先生の奥様! どうぞ壇上に上がってください!」
って、ここにいるってことは、禁断の女子生徒かぁぁ! もしかして!?
学園恋愛小説のような展開に、俺の心臓もドキドキしてきた。
「「「ええぇーーー!!」」」「「マジかー!!!」」」「「イヤー!!」」
『えっ、嘘、こんな展開マジですか?』
壇上に上がった一人の女性を見た生徒達から悲鳴のような声。
天堂先生の横に並んだのは…………高峰先生だった。
薄いピンクのセクシースーツを着た笑顔の高峰先生。
壇上に上がった高峰先生は、天堂先生と恥ずかしそうに見つめあう。
天堂先生は高峰先生の背中に片手を添えながら、マイクの方に近づいた。
「えーと、『RPS BATTLE』中は生徒の皆さんを浮き足立たせてはと思い自粛しておりましたが、昨日2人で区役所に婚姻届を提出して来ました」
「「「おめでとー!!」」」「「「幸せになってー!!」」」
天堂先生からの報告に、生徒達から祝福が上がった。
「「天堂先生、高峰先生、ご結婚おめでとうございます!!」」
大倉男子生徒会長と十文字女子生徒会長が大きな花束をそれぞれ持って、再びステージ上に登場した。
そして、大倉男子生徒会長が天堂先生に、十文字女子生徒会長が高峰先生に花束を手渡す。
天堂先生と高峰先生は嬉しそうに花束を受け取った。
「天堂くん、高峰……いや天堂由美さん、おめでとうございます。せっかくですので、少しここでインタビューしてもいいですか?」
「「ウオォォォッ」」「「ヒューヒュー」」
校長先生の言葉に、生徒達からは冷やかしの声が飛ぶ。
「お二人が付き合うようになったのは何時ごろですか?」
「そうですね。宿泊学習が終わった頃……」
「「えぇーっ」」「「うおぉぉぉっ」」
「お互いになんて呼び合っているんですか?」
「由美」「理才さんと呼んでいます」
「「いいなぁぁぁ」」「「キャア」」「「鼻血でそう」」
――まるで芸能人の恋愛インタビューのように校長先生が次々と天堂先生と高峰先生に質問をしていく。
そんな質問など全く耳に入らない様子でただ、呆然とする鈴木先生を俺達D組の生徒達だけが憐れみの気持ちで見つめていた。