エピローグ2
「そういえばユウは好きな子はいないの?」
「あー、いやー、お、俺はまだ……」
突然のトモの突っ込みに一瞬言葉を失う。
俺の好きなのはユメ。だが、それをトモに知られたら――。
『えっ、ユウってロリコン?』とか『ユウ、小学生は犯罪だよ』とか言われそうだよー!
黙り込んで考え込んだ俺の様子に、トモの顔が真面目になる。
「もしかして……ユウの好きな子って、ミクちゃん?」
「ハアァァッ!?」
真剣な顔で俺を見つめるトモの発言に驚くなんてもんじゃない。
俺のどこを見たらそう思えるんだー!?
「ちょっと待ったー! なんでミクがぁぁ?」
「違うの?急に挙動不審になったから……」
ダァァァァッ!! なんでそっちの発想になるんだ!
「親友のユウには悪いけど、ミクちゃんだけは譲れないんだ」
「ちっがーう!! 俺が好きなのはユメだ!!」
もうトモにどう思われてもいい!ミクだと思われるより全然マシだ!
「あっ、そうなの?」
「あったりまえだろ、誰があんなうざくて凶暴なミクなんか――ってトモォォ!?」
「ユウ、誰がうざくて凶暴なのさ」
「うわぁぁスマン、頼むぅ、足が折れるぅぅぅ、許してくれー」
トモが俺の足を捻り、得意のプロレス技を俺にかけてきた。
俺の足に激痛が走るが、トモの技は容赦ない。
もしかして、明日からはミクの悪口一つ言えないのか!? 俺は心と体の痛さで半泣きになっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――それから数日後。この日は幸命高校2学期の終業式。
「いやー、まさかこのクラスから3人も生徒会に選ばれるとは、先生嬉しいです」
先生が喜ぶのも当然だ。
1年D組からは『PRS BATTLE』に優勝したミクが女子生徒会長。
毛筆、ペン字など『書記テスト選抜』でトップの成績になったコウジが書記。
『PRS BATTLE』の決勝でトモに負けて、約束通り役員補佐になった俺。
1年生、しかもD組という成績が最下位のクラスから3人も生徒会役員が選ばれたのは、この幸命高校創立以来、初めてのことらしい。
「こんなにいいことがあるなんて、教師生活20年来の幸せです」
「先生大げさー」
「大げさじゃありません。みんなの勇気を見て先生も色んなことに頑張ろうと……」
鈴木先生は目を真っ赤にして、教室中を見渡した。
「先生、何を頑張るんですか?」
「い、いや、先生、思いを寄せている人に告白してみようかなっと……ダメだと分かっているんですが」
目だけではなく、顔も真っ赤にした先生が教壇のところで照れまくっている。
おっさんがモジモジしても可愛いくないんですが……。
「えー、先生誰ですか?好きな人って?」
「あー、いやー」
「もしかして、高峰先生ですか?」
「あー、まー、そのー……」
鈴木先生は顔を俯き、声も小さくなっている。
おいおい、鈴木先生。いつも俺らを叱るくらいしっかりしてくれよ。動揺しすぎだろ。
「先生頑張れ!」「そうだ頑張れ!」
そんな小さくなっていた鈴木先生に生徒達が励ましの声を掛けていく。
「分かりました。先生、今日の放課後頑張ってみたいと思います」
「ヒューヒュー」「いけいけー」「押し倒しちゃえ」「それ犯罪」
過激な声援も上がるが、D組の生徒達は鈴木先生が大好きなんだ。
生徒達の声援に鈴木先生の顔が笑顔になった。
「ま、話はこれぐらいにしてそろそろ終業式が始まるので皆さん、椅子を持って体育館に行きましょう」
「「「ハーイ」」」ガタガタッ
俺達は自分たちの椅子を持つと、廊下に並んでから体育館に向かった。
階段を下りる途中で、ミクと並ぶ俺。
「なあミク、鈴木先生上手くいくといいな?」
「あー、う、うん。そうだね」
「ん、なんだその気のない返事は?」
「ううん、なんでもない」
返事に心がこもっていないミクに疑問を持ったが、そのまま体育館へ入っていった。