8-20
「トモ、俺達勝負が決まっても友達だよな」
「当たり前だよ、ユウ」
何言っているんだと言いながら、トモと俺は試合の準備を始めた。
防具マスクを着け、身体検査を終えた俺とトモがバトルスペースの下に控えると、先ほどと同じように体育館の中が暗闇に包まれた。
「いよいよこれが最後の試合、来年度の男子生徒会長を決める決勝戦を行います!バトルスペース白は、1年A組天樹友助!バトルスペース青は、1年D組三上有利!2人の登場です!!」
「「イケーッ!!」「「負けんじゃねーぞ!!」」「「ガンバレー!」」
体育館の中に悲鳴のような声援が飛び交う中、スポットライトの光を浴びた俺とトモがバトルスペースに上がった。
そして所定の位置に立つと、大柳校長が右手を上げた。
「両者、相手に敬意を払い、礼!」
「「よろしくお願いします!」」
俺達は礼を交わし、再び向かい合った。
「トモ、お前とこうしてここで戦うのは最初で最後なんだな」
「そう言えばそうだね。すっかり忘れていたよ」
俺もトモも穏やかな声で語り合う。
勝った方が男子生徒会長、負けた方は生徒会役員になると決まっている。
つまり、俺もトモもこの学校で『RPS BATTLE』に参加できるのは今日で最後なんだ。
体勢を整えると、大柳校長が右手を上げて口を開く――。
「試合を開始します。両者セット! ……RPS GO!」
「うおぉぉぉっ」「やあぁぁっ」
俺とトモの右手が宙に動き、体の前に伸びる!
俺の出した手、パー。トモの出した手、キョキ。白、トモの攻撃権!
そして素早いトモの左手が俺を襲う!
…………
……
「デフェンス。両者リプレイ」
「やっぱりユウは強いね」
「そう簡単に負けてたまるかって」
俺がトモの左手を素早く叩き落すと、防御成功のコールが大柳校長から出された。
「なあ、トモ。8ヶ月ってあっという間だったな」
「そうだね。まさか決勝戦に立てるなんて思わなかったよ」
「あぁ、俺もだ」
俺とトモは静かに語り合いながら体勢を直す。するとまた、大柳校長の右手が上がった。
「両者セット!……RPS GO!」
俺の出した手、チョキ。トモの出した手、グー。白、トモの攻撃権!
…………
……
「デフェンス。両者リプレイ」
ジャンケンではトモは勝って攻撃権を得るが、俺はしっかり防御する。一進一退の攻防だ。
「トモ。俺お前と今日、こうして戦えて嬉しいよ」
「僕もだよ。嬉しくて背中がゾクゾクしているんだ」
マスクを被っているが、お互い笑顔で会話をしているのが分かる。俺達、親友だからな。
「両者セット!……」
大柳校長の声で姿勢を正すと、トモが俺に話しかけてきた。
「ユウ……」
「ん、なんだ?」
「だから、この勝負、僕は負けないっ!!」
トモの声と体制に、気迫が篭ったオーラが見える。その言葉に俺も気合が入る。
「……RPS GO!」大柳校長の声が体育館に響いた。
「俺だって負けない!」「僕だって!!」
次の瞬間、バシッというするどい打撃音と、勝利を告げる機械音が体育館の中に響く。そして電光掲示板に「Hit!!!」の文字が光った。
そして、大柳校長の声も一段と高く響いた。
「勝者、天樹友助! 来年度の男子生徒会長に決定です! おめでとう!!」