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「いい加減にして。西郷さんなんか生徒会長にさせない!」
「フン、上手くよけたわね」
「Attack」と点灯が消え、青、ミクの電光掲示板に「Defense」と点灯された。
「デフェンス。両者リプレイ」
大柳校長の冷静な声が聞こえる。
ミクと西郷は体勢を直しながら、マスク越しに睨み合っていた。
そして西郷が皮肉っぽく話し出す。
「あらぁ、そういうのはね……」
「両者セット……RPS GO!」
「――ジャンケンで勝ってから言いなさいよっ!」
大柳校長の合図に被せるように西郷がミクをけしかける。
ミクの出した手はチョキ。西郷の出した手はグー。また西郷の攻撃権!
「顔だけのくせにっ――!!」
ガッ! バシィーン!!
顔面に飛んでくる西郷の左手を払いのけるミク。西郷はミクの顔面ばかり狙っている。
「フフ、ホントジャンケン弱っ。言っておくけど、こう見えても私、剣道3段なの。体力切れを待っても無駄よ」
「そんなこと考えていないわ」
「どうだか。話は変わるけど、天樹くんって優しいわね~。この間もA組で勉強を教えてくれたわ」
「トモが!?」
西郷は体勢を整えながらミクの好きなトモのことを話しに出す。
その話にミクの体が少し硬くなるのを西郷は見逃さなかった。
そして、大柳校長が右手を上げて合図を出す。
「両者セット……RPS GO!」
「……二人っきりでね!」
「……!?……」
西郷の言葉に動揺するミクは、慌ててジャンケンを出した。
ミクの出した手はパー。西郷の出した手はチョキ。またもや西郷の攻撃権!
「アハハハ、バカな女ね!」
バン! ガツッ!
「デフェンス。両者リプレイ」
西郷から攻撃を受けるが、なんとか交わしていくミク。だが、西郷の態度は変わらない。
「私が勝ったら天樹くんに告白するわ。きっと彼も生徒会長……ううん、仮になれなくても、女子生徒会長推薦で天樹君を生徒会役員に任命するの。そうしたら私と天樹くんはずーっと一緒だもの、クスクス」
西郷は自分が女子生徒会長になったら生徒会長任命権を利用して、仮にトモが負けたとしても、生徒会役員に任命するとミクに伝えた。
ミクはその言葉に蒼白した。なぜなら男子生徒会長になることがトモの夢。西郷が任命してしまえばトモは来年『RPS BATTLE』に参加できないからだ。
「トモを西郷さんの都合で振り回さないで!」
「だったら……私に勝ってみなさいよ。ジャンケンすら勝てないくせに」
ミクが西郷に訴えるが、西郷はミクをバカにして相手にしない。
西郷への怒りが頂点に達しようとした時、大柳校長が合図を出す。
「両者セット……」
「――この負け犬がぁぁぁ!」
「私は……私は……」
西郷の右手が高く上がり、体の前に振り落とされる――。
「ミクちゃん、頑張れ!」
トモの声援がミクの耳に届くと、ミクの頭の中にトモと過ごした日々が駆け巡った。
ミクは右手に全神経を集中させた。
「RPS GO!」
「私はあんたなんかに負けないぃぃ!」
ミクの西郷への怒りが右手に込められる!
ミクの出した手はチョキ。西郷の出した手はパー。ミクの攻撃権!
ミクの左手が素早く西郷の体に向かっていく。
「はあぁぁぁあああっ!!」
「えっ、なに!?」
バシィーーン!ブーーーーーッ!!
ミクの左手が西郷の右肩に当たった。
ミクが勝つと思わなかった西郷は体が前に出ていたため、ミクの攻撃をよけることができなかった。
青、ミクの電光掲示板に「Hit!!!」と表示がされると、今のミクの攻撃が大型スクリーンに映し出された。
「勝者、時実未来!来年度の女子生徒会長に決定です」
「「おめでとー!!」」「「未来さん、やったね!!」」「「時実さんが勝った!!」」
審判を努める大柳校長のコールで、体育館の中が一気に大声援に包まれた。
すると、バトルスペースに天堂先生と鈴木先生が現れて、天堂先生は西郷の防具マスクを、鈴木先生はミクの防具マスクを外した。