7話 植物って怖いね
感想を書いてくれた方、返信が遅くなってしまい申し訳ない。
「あれはゴブリンか。」
狩りの途中、俺はよくゲームなんかで見かける雑魚敵、ゴブリンを目撃した。
今の俺だと、例え雑魚敵代表のゴブリンといえども巨人に見える。残念ながら勝てそうもない。
『ゴブリンは亜人に分類されるモンスターよ。
ゴブリンは一匹見かけたら百匹はいると思ったほうがいいわね。もしかすると、この近くに集落があるのかもしれないわ。』
言われ方がゴキ〓リだな。同じ頭文字Gだけど、そこまで言われると少し同情する。
蟲とゴブリンは通ずるところがある気がする。数と圧倒的な繁殖力で勝負するところとか。
といっても、そのうちしっかり集落ごと落としてやるけど。同情はしても容赦はしない。
「ここらで一休みするか。」
朝から随分と闘っているのでみんな疲れているだろう。
敵に見つからなさそうな木の根の隙間に入りこみ、俺達は一休みに入る。
「アリス、ステータスを見せてくれ。」
《雪兎》
Lv:68
種族:混沌蟲
特性【無限進化】
スキル【魔蟲の創造】
創造可能種
《魔蟻》
《兵隊魔蟻》
《酸魔蟻》
《甲殻蟲》
《角殻蟲》
派遣蟲残存数
《魔蟻》…75匹
《兵隊魔蟻》…25匹
《酸魔蟻》…32匹
《甲殻蟲》…34匹
統率群
《兵隊魔蟻》…2匹
《酸魔蟻》…2匹
《甲殻蟲》…2匹
《角殻蟲》…3匹
《ユラ》
《リリー》
《カゲツ》
『外にいる蟲と、今いる蟲を分けて表示しておいたわ。』
「あんがと。」
今まで、実は自分の群にいる蟲を残存蟲数から引いて、外に派遣した蟲の数を計算していたので、これは助かる。正直、計算するのが面倒だし。
俺達はあの木亀と闘ってから多くの魔物を倒した。おかげでレベルも大量に上がった。この調子ならそう遠くない未来に進化できそうだ。
まだ日が暮れるまでには時間がある。今日中にもう少しレベルをあげたい。
「アリス、近くに強めの敵はいるか?」
いつものようにアリスが空に飛び立ち、頭上を旋回した。
『植物系の魔物が向こうにかなりいるわね。』
アリスが向く方向には一際巨大な木があった。
この森は普通の木でさえ巨大だ。おそらく四十メートルは下らないだろう。今の俺からしたらそれですら山のように感じるには充分な大きさだ。
因みに、俺の見た成長した木亀はその巨大な木々よりも更に大きかった。正に動く山と称していいほどに。
さて、話を戻してアリスの向く方向にある木についてだが、その木は普通の巨木よりも更に巨大、言うならば天然のスカイツリーだ。さすがに634メートルは無いが、百メートルくらいはあるだろう。
「やっぱり、あの木が植物系の魔物を呼び寄せているのか?」
『あの木は《命の木》といって、周りに生命力を撒いているの。だからあの木の周りでは植物系の魔物が多いし、それを食べにくる魔物もたくさんいるわ。
ただ、あそこの植物は強すぎるから、よっぽど強い魔物しか生き残れないわね。』
なるほど、あそこは植物の世界というわけか。いつかは蟲の世界にしてやろう。
「そんなに強い魔物がいるなら、まだ俺達には厳しいんじゃないか?」
ゴブリンすら倒せない俺達には早過ぎる気がする。
『もちろん、深部にまではいかないわ。少し近付くだけよ。強すぎない植物系の魔物がいる場所までね。』
つまり、RPGよろしく段々と強くなっていくわけか。それなら《命の木》にはボスが待ってたりしてな。
……やめよ、なんか本当になる気がしてきたから。
休憩を終わりにして、さっそくアリスについていく。《命の木》に近づくにつれ徐々に、辺りが薄暗くなってきた。この辺りは《命の木》の影響か木々が異常なほど成長しており、日光を遮ってしまっているのだ。
『来るわよ。』
「止まれ。」
群に停止の命令を下す。
アリスに言われたから止まったものの、視界に敵らしきものは映らない。
アリスの誤認か?
そう思った瞬間、地面からいきなり緑色の何かが現れた。
『来たわ!!』
地中から次々と現れる植物の魔物。その魔物は蕾のような顔に蔦が幾重にも絡まってできたような体をしていた。大きさは俺の二倍程の体格で、そこまで脅威には思えない。
最終的に七匹の魔物が地中から這い上がってきた。
「数で勝負ってわけか。」
『この子達は《プラネシア》という魔物で、集団戦に特化しているわ。』
俺達に集団戦を挑むとは面白い。
「殲滅しろ!!」
蟲達が俺の命令を聞き、プラネシアに挑んでいく。向こうの数も多いので、プラネシア一匹に対して蟲は二匹くらいで闘っている。
ユラとカゲツに関しては一匹でプラネシア一匹と渡り合い圧倒している。
他の蟲達は兵隊魔蟲や甲殻蟲がプラネシアと肉弾戦を繰り広げ、隙をついて酸魔蟻が酸をかけたり、角殻蟲が角でプラネシアを刺したりしている。
例え、傷ついてもリリーが回復してしまうので問題ない。
そして、そこまで苦戦することも無くプラネシアの殲滅は済んだ。
『上から《シルジア》が来るわ。』
アリスがシルジアと呼んだ魔物は上から降ってきた。二葉が体から生えているその魔物はそれをプロペラのようにして滑空してきたのだ。プラネシアと同じように体は蔦で出来ており、そこに巨大な口がある。食虫植物と言うのが一番ぴったりくる。正に俺達の天敵だ。
『下からも来るわよ!!』
プラネシアも追加で現れれ、凄い数の魔物に囲まれてしまった。
これは少しまずいな。
「敵を倒しながら徐々に後退するぞ。」
さすがにこのまま前進するのは厳しいだろう。レベルアップには良いかもしれないが、死ぬ可能性もある。しっかり退路を確保しておくべきだ。
徐々に退避する俺達を追ってくる植物魔物達。それを片っ端から倒す。
俺に攻撃がこないようにユラとリリーとカゲツは俺の周りを固めさせる。
しばらく俺達と植物の攻防は続いた。倒しても倒しても現れる植物魔物達だが、逃げ切れないほどではない。
しかし、もう少しで逃げ切れるとなった時、若干遅れ気味だった甲殻蟲二匹と酸魔蟻一匹が植物の蔦に絡まれ、大量の植物魔物に囲まれてしまった。
悲痛な叫びを上げる蟲達。だが、既に助けることはできないくらいの植物魔物に集られていた。
「なら有効利用しなきゃな。」
久しぶりにあいつを喚ぼう。
「召喚、【狂った力の追求者】」
召喚されたクロシアは目の前にある肉の塊に飛び込んでいき、嬉々として植物魔物達を喰らっていった。
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