6話 新たな力
目が覚めると、大量の死骸が俺の視界に入ってきた。
「頑張り過ぎだ。」
蟲達は俺の言うことを忠実に聞くため、ひたすらに狩ってきた獲物を巣に押し込めたらしい。おかげで巣の中は凄いことになっている。
とりあえず、ステータスを確認する。
《雪兎》
Lv:48
種族:混沌蟲
特性【無限進化】
スキル【魔蟲の創造】
創造可能種
《魔蟻》
《兵隊魔蟻》
《酸魔蟻》
《甲殻蟲》
《角殻蟲》
残存蟲数
《魔蟻》…10匹
《兵隊魔蟻》…5匹
《酸魔蟻》…3匹
《甲殻蟲》…4匹
《角殻蟲》…1匹
別働隊として出した蟲と、残存蟲数を比較して、死んだ蟲を計算すると、
《魔蟻》…10匹死亡
《兵隊魔蟻》…1匹死亡
《酸魔蟻》…1匹死亡
《甲殻蟲》…1匹死亡
となる。どうやら、別働隊の一チームが壊滅したらしい。
もちろん、それくらい想定内だが、俺達蟲はこの森ではまだ弱者なのだと思い知らされる。
それと、レベルが上がってきたからだろうが、レベルが上がり難くなっている。もっと強敵と闘わなければいけないようだ。
蟲達が帰ってきてから、飯を食わしてやる。正直、有り余る程の食糧なのでどんどん食べて欲しい。
クロシアに食べさせてもいいが、それだとあっと言う間に食糧が消えそうだからそれは最後の手段としたい。
という訳で、俺はかつてない程の大規模な狩りに出掛けることにした。ありったけの蟲を生み出して減った体力は絶えず食糧で補給した。
一チームが、
《魔蟻》…10匹
《兵隊魔蟻》…3匹
《酸魔蟻》…4匹
《甲殻蟲》…4匹
になるように数を調整してから、十チームを外に放った。
命令はいつも通り、兵隊魔蟻にしておいた。
「さすがに疲れたな。」
蟲の体になって、体力は食糧を食べればすぐに回復できるようになったが、精神的な披露はどうにもならない。
『少し、創造し過ぎじゃないかしら?』
まぁ、今回は食糧の一掃が目的だから、計画性がないのは確かだ。だが、俺のレベルが上がりにくくなっている今、数でそれを補うというのは悪い選択ではない気がする。
「なんとかなるだろう。」
今、創造した蟲達が全て帰ってきたらこの巣じゃ狭いな。
魔蟻を追加で十匹追加で創造し、巣の更なる拡張を命令しておく。
「よし、行くか。」
やることは終わったので俺達も狩りに出掛ける。
因みに、俺の群の構成はこうなっている。
《兵隊魔蟻》…2匹
《酸魔蟻》…2匹
《甲殻蟲》…3匹
《角殻蟲》…3匹
これに、ユラとリリーとカゲツを加えた13匹だ。
因みに、兵隊魔蟻二匹は最初の方からいたレベルの高い個体だ。おそらく次に進化する個体はこの二匹になるだろう。
「アリス、まずは新しく生まれた三匹の能力が知りたいから、比較的弱い獲物を探してくれ。」
アリスはしばらく頭上で旋回した後、一つの方向に向いて止まった。
『向こうに《木亀》の幼生がいるわ。《木亀》は成長すると強い魔物だけれど、生まれたばかりの幼生なら弱いわよ。』
《木亀》は森で見たことがある。山と言われても納得してしまいそうな巨大な魔物だ。成長した個体には勝てそうにないが、幼生ならなんとかなるだろうか。
まぁ、アリスが大丈夫というなら信じるけど。
俺達にとっては険しい道のりの十メートルを歩くと、二十センチ程の背丈の《木亀》が現れた。
たしかに、この大きさなら大した脅威にはならない。といっても、幼生ですら俺の六倍の体格を誇るのだから恐ろしい。
「ユラ、リリー、カゲツ、お前達の力を見せてくれ。」
『『『御意』』』
さすがに三匹同時に念話をやられると頭に響く。慣れるしかないのだろうけど、地味に辛い。
この三匹はアリスには遥かに劣るといっても、他の蟲に比べたら知能は高い。なので、俺の抽象的な命令にも、自分で考えて動いてくれる。
最初に動いたのはユラだ。ユラは糸のようなものを木亀の足元に吐き出した。
ユラの吐き出した糸は木亀の足元に付着した瞬間、氷の柱となって木亀の足を地面に縫い付けた。
俺達を敵と判断した木亀だが、身動きを既に封じられている為、動くことができない。
あれだけ巨大なものの動きを封じ込めるユラの糸は賞賛に値する。
次に動いたのはカゲツ。動きのとれない木亀の甲羅に食らいつく。
いくら何でも無謀だと思ったが、カゲツは見事に木亀の甲羅をそのアギトで砕いてみせた。さすがに全てが砕けたわけではなく、巨大な甲羅からしたら欠けたと言った方がいいような小さな傷だったが、あの頑丈そうな甲羅を僅かにでも砕けたのだからカゲツの力は蟲としては凄まじい。
リリーは戦闘には参加していない。まぁ、リリーの真髄は闘うことではないのだから仕方ないか。
甲羅を砕かれた木亀は叫び声を上げ、動きを封じている氷糸を粉砕し体の自由を取り戻した。更に甲羅の上にいるカゲツに首を伸ばし、噛みついた。
木亀が暴れた為、足場が安定しないカゲツはその攻撃を完全に避けることができず、足を一本、引きちぎられた。
しかし、次の瞬間、リリーの方から鈴の音のような音が聞こえ、みるみるうちにカゲツの足が再生していった。これが、リリーの癒やしの力。確かに戦闘力は0に近いかもしれないが、この回復力は大いに役に立つ。
これで、多少の怪我は怖れなくてよくなったのは大きいだろう。
再びユラが糸を吐き、木亀の動きを封じる。これなら時間はかかるだろうが、三匹だけでも木亀を倒せるかもしれない。だが、今回の目的であった三匹の力の見極めは既に済んだ。これ以上長引かせるのは無駄だと思ったので、この闘いはもう終わらせることにする。
「全員で《木亀》を倒せ。」
群を動かす。動きを封じられている木亀はその群を前に為すすべもない。
必死に抵抗する木亀だが、傷ついた蟲はリリーが癒やしてしまうので、こちらに大した損失も与えられていない。
結局、木亀は甲殻蟲一匹の犠牲で倒すことができた。犠牲になった甲殻蟲は木亀の噛みつきを頭部に食らって即死してしまった個体だ。その防御力をもってしても木亀の噛みつきは防げなかったようだ。逆に重い体が仇となり、木亀の攻撃を避けることができなかった。
さすがのリリーも死んだ蟲を生き返らせることはできないらしい。
何はともあれ、三匹の能力は素晴らしく、間違いなく俺の力となってくれるだろう。
少しずつではあるが、俺も俺の群も強くなってきていると強く実感できた一戦だった。
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