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5話 喋る虫

今日は俺はお休みである。繭を見守りながら、暇なので俺が邪神に理不尽に落とされたこの世界について考えることにした。

今の俺の世界の大半を占めるこの森にはたくさんの魔物がいる。小さい魔物から巨大な魔物まで多種多様だ。

一度、巨大な魔物の足に踏まれそうになった時は肝を冷やしたものである。アリスが事前に知らせてくれながったらどうなっていたことか。

思考がずれたな。ともかく、俺の世界、つまりこの森にはまだ俺ではかなわない敵がそれこそ山ほどいるってことだ。

それにこの森だけが世界の全てということは無いだろう。きっと森の外にはここの超巨大魔物よりももっと強い魔物がいるに違いない。

そこはアリスにでも訊いてみる。


「アリス、この森の魔物より強い魔物っているのか?」


『いるわよ。普通にたくさん。

それこそドラゴン種なんてこの森の魔物が束になっても勝てないでしょうね。』


この世界にはドラゴンがいるらしい。

どうせなら俺もドラゴンとかそういう格好いい魔物に転生したかったものだ。

人間とは言わないが、せめて虫以外の何かが良かったと本気で思う。


そういえば、人間ってこの世界にいるのだろうか。


「アリス、この世界には人間とか文明とかはないのか?」


困ったときはすぐにアリスだ。いやー、アリスが物知りで本当に助かっている。


『人間も亜人、つまりエルフとかドワーフもいるし、文明もある程度の水準で存在しているわ。でも流石にユキトのいた世界程、科学は発達していないわね。時代で言えば中世のヨーロッパくらいかしら。』


ファンタジーではお馴染みの年代だな。それに亜人も存在するのか。是非一度は会ってみたいところだ。

といっても、俺はまだまだ弱いから外の世界になんていけそうもないけどさ。

まずはこの森で最強にならないと。


そんな調子で、焦っても仕方ないと、ゆっくり時間を過ごした。









『そろそろ孵るわ。』


日も暮れた頃、アリスがそう知らせてくれた。

繭となった三匹のもとへ急いで行くと、確かに繭が小刻みに震えていた。

しばらく見守っていると、繭にひびが入り、中から新たな姿となった三匹の蟲が現れた。


一匹目は蜘蛛のような外見の蟲で、大きさは魔蟻の三倍くらいはある。

二匹目は蜻蛉のような綺麗な翅を持つ蟲、大きさは魔蟻とそこまでは変わらない。

三匹目は見た目は兵隊魔蟻、ただし大きさは普通の兵隊魔蟻よりも一回り大きい。色も若干違うようだ。


「アリス、こいつらのこと分かるか?」


『名前だけなら。その蜘蛛みたいなのが《氷結蜘蛛(アイスタランチュラ)》で蜻蛉みたいのが《鈴音の癒蟲(ヒーリングインセクト)》、大きいのは大きさは違えどやっぱり《兵隊魔蟻》よ。』


「どんな力を持っているかは分からない?」


『名前からの予測しかできないわね。』


大ざっぱな能力しか今のところは分からないようだ。

氷結蜘蛛(アイスタランチュラ)》は名前から察するに氷を使えそうな雰囲気がするし、《鈴音の癒蟲(ヒーリングインセクト)》は回復系の能力を持っていそうだ。

何はともあれ、そのへんの能力の確認は必要だろう。それにこいつらが俺の言うことをしっかり聞いてくれるかも調べなければならない。



『ユキト様。』


そう思っていると頭にアリスとは異なる声が響いた。


「誰だ?」


状況からして、この三匹のうちの一匹の仕業だろう。


『私デス。』


氷結蜘蛛が前に出る。


『驚いたわ。念話が使えるのね。』


どうやらアリスにも声が届いていたらしい。しかし、この頭に響く声、アリスに比べると聞き取りづらいな。やはり、アリスよりは知能レベルは低いようだ。

まぁ、それでも会話をしてきたのには俺も驚いた。


「念話ってのは、この頭に直接響くやつだろ?」


『ええ、そうよ。知能ある魔物にしか使えない高等な能力ね。』


「つまり、この氷結蜘蛛はそれなりに高等な種族ということか?」


『いえ、高等な種なわけではないわね。多分、この子達が特別なだけだと思うわ。』


何にしても、意志疎通がとれるのは大いに助かる。


「で、氷結蜘蛛おまえは俺に忠誠を誓うか?」


もし、反逆を起こされてもいいように、クロシアの用意をしておく。あいつは仲間にも問答無用で食らいつくからこういう場面では役に立つ。


『勿論デゴザイマス。』


たが、その必要はなかったようだ。氷結蜘蛛は頭部にあたる部分を下げ、俺に服従の意を示した。

これでとりあえずは安心だ。


『『ユキト様、我ラモ、アナタ様二忠誠ヲ誓イマス。』』


今度の念話は《鈴音の癒蟲》と、《兵隊魔蟻》からだった。

どうやら、進化した個体は念話が使えるようになるらしい。いや、この三匹が特別なだけかもしれないが。


ともかく、この三匹が新しく俺の戦力に加わったわけだ。

いつまでも種族名を言うのはまどろっこしいので俺はこの三匹に名前をつけることにした。

かなり適当に考えて、三匹の名前はこうなった。


《氷結蜘蛛》→ユラ

《鈴音の癒蟲》→リリー

《兵隊魔蟻》→カゲツ


名前は全てフィーリングで付けた。特に深い意味はない。

さっそく名前を伝えると、三匹はとても喜んでくれた。

アリスによると、名前をつけることは大切なことらしい。まぁ、だからといって生まれてきた蟲に全て名前をつけていてはきりがないし、感情移入しすぎるのも危険だろう。

ということで、名前は進化した個体にだけにつけることにした。


本当ならすぐにでも三匹の能力を調べたいところだが今日はもう遅い。夜になると強力な魔物も増えるとアリスから聞いているので、三匹の能力の調査は明日に回すことにした。


今日は別働隊に甲殻蟲と酸魔蟻を一匹ずつ追加して派遣した。別働隊は全部で四チームある。一チームの編成はこんな感じだ。


《兵隊魔蟻》…1匹

《魔蟻》…5匹

《甲殻蟲》…1匹

《酸魔蟻》…1匹


一番知能の高い種である兵隊魔蟻にいつもと同じ命令をして、俺は眠りについた。





















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