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2話 知りたくなかった虫の味

『雪兎のステータスを分かりやすく視覚化できるようにしてみたわ。』


アリスがそう言った瞬間、目の前に半透明の板みたいなものが現れた。便宜上、ウィンドウと名付けたそこには俺の今の状況が記されていた。


《雪兎》

Lv:1

種族:混沌蟲


特性【無限進化】


スキル【魔蟲の創造】

創造可能種

《魔蟻》



一通り見てからウィンドウを閉じる。


「どうやったら《魔蟻》を創れる?」


とりあえず、今の主戦力は【魔蟲の創造】によって創られる兵隊だろう。


『望めば創れるはずだけど最初は声に出した方がいいかもね。』


言われた通りに声に出してみる。


「創造、種族は《魔蟻》、数は一。」


すると土から俺と同じ大きさくらいの蟻が現れた。凄い迫力だ。正直怖いが、まずは本当に俺の言うことを聞くか試してみなければ。


「回れ。」


俺の言葉に従い、蟻が回りだした。どうやら俺の言うことはしっかり聞いてくれるらしい。


「止まれ。」


いつまでも愚直に回り続ける蟻を止まらせる。俺の命令は聞けど、高い知能は無いようだ。


更に《魔蟻》を二十ほど生み出す。そこで体力的限界を迎えた。今の俺にはこれが限界らしい。


「アリス、この戦力で倒せる魔物を探せるか?」


『任しときなさい。』


アリスの仮の姿だという蝶が飛び立ち、上空で旋回する。


『見つけたわ。こっちに《ワーム》がいる。これなら今の戦力でもどうにかなりそうよ。』


距離は関係ないのか、アリスは遥か上空にいるにも関わらず、アリスの声はしっかり頭に響いた。

俺と蟻達はアリスの後を追い、そして、大きな芋虫を見つけた。

大きいと言っても、今の俺が基準なので実際は二十センチほどだろうか。それでも俺からしたら四倍もの体格を誇る巨大生物には違いない。


『《ワーム》は特に特別な攻撃はしてこないわ。』


「ワームを殲滅せよ!!」


俺の言葉に二十の蟻が反応し、ワームに向かっていく。その姿は圧巻であり、正に昔映像で見た軍隊アリそのものだった。


「¢£#&*@!!」


ワームが言葉にならない悲鳴を上げる。蟻達は暴れるワームに振り落とされないように、その強靭なアギトでもってワームに食らいつく。更に、蜂のように尖った尻をワームの柔らかい肉に刺し込む。

どうやら《魔蟻》には毒があるらしく、ワームの動きが鈍っていくのが目に見えて分かった。

そしてしばらく経ち、ワームは呆気なく死を迎えた。


力が漲り、自らの体が強くなったのを感じる。これがレベルアップというものか。


「アリス、ステータスを見せてくれ。」


《雪兎》

Lv:6

種族:混沌蟲


特性【無限進化】


スキル【魔蟲の創造】

創造可能種

《魔蟻》

《兵隊魔蟻》



案の定、レベルが上がっており、創造できる蟲も増えていた。

早く創造したいところであったが、体力が少ない。


「ワームを食わなきゃならんのかい。」


体力を回復するには何かを腹に入れなければなるまい。そして俺の目の前には大きな肉塊が転がってはいる。ただし、芋虫のものという致命的欠陥があるのだが。


『邪神に復讐するのでしょう?

ならこれくらいのこと乗り越えて見せなさい。』


アリスに激励され、仕方なしにワームの生肉を口に入れる。


案外旨かった。


食うまでは抵抗があったが一度食ってしまえば、その旨さの虜となってしまった。

満腹になるまで食ったあと、体力の回復を待って新しく創れるようになった《兵隊魔蟻》を創ることにした。


「創造、種族は《兵隊魔蟻》、数は一。」


すると、魔蟻の時と同じように兵隊魔蟻が土から這い出てきた。大きさは魔蟻よりも若干大きく、何よりアギトが魔蟻よりも巨大だ。その姿は戦闘に特化した魔蟻といっていいだろう。ただ、やはりただの魔蟻に比べると創造に消費する体力も大きいようだ。おそらく兵隊魔蟻一匹で魔蟻五匹に相当する体力を持っていかれている。


「次の獲物を探すとしますかね。」


兵隊魔蟻もできたことだし、もっと強い相手と戦っても勝てるだろう。そうすれば俺はもっと強くなれるはずだ。


『雪兎、もうすぐ日が暮れるわ。安全に休める場所を作っておかないと危険よ。』


まだ充分明るいと思うが、寝床を確保することを考えると、確かにそろそろ動かなければいけないか。

俺は近くにあった木の根元に行き、そこを掘るように蟻達に指示した。ようは蟻の巣を作るのだ。

日が暮れ、夜になってやっとその作業は終わりを迎えた。中に入ってみると、大きな空洞が地下にできていた。閉所恐怖症の人間にはとても耐えられないだろうなと思いながら、巣の中に入っていく。すると、安心したのか、待たされているうちに緊張がほどけてしまったのか分からないが、極度の疲れが体を襲った。さっき肉を食べたばかりだから、これは肉体的というよりも精神的疲労だろう。


「仕方ない、今日は休むか。」


焦ってレベルを上げても死んでしまっては元も子もない。ならば万全な状況でない今、魔物狩りにでかけるのは得策ではないだろう。


『それが良いわね。雪兎は今日、いろいろあったから自分でも気付かない内に疲れが溜まっているのよ。』


「そうだな。でもどうせ寝るなら体も疲れさせようかな。」


俺は兵隊魔蟻を追加で三匹創造しそれぞれに、『外に魔蟻を引き連れて出て、存在戦力で勝てそうな魔物を狩ってこい。狩った魔物の死体は巣に持ち帰り、それを終えたら再び勝てそうな魔物を狩れ。』という指示を出した。兵隊魔蟻は魔蟻に比べて知能が高いようでその命令をしっかり理解してくれた。魔蟻は五匹ずつに分け、四匹の兵隊魔蟻にそれぞれつかせた。こいつらには単純に『兵隊魔蟻に従え』という命令をだした。

魔蟻達は巣を出て行き、俺のレベルアップに貢献しに行った。


「アリス、何かあったら起こしてくれるか?」


『分かったわ。』


俺は精神的にも肉体的にも限界を迎え、倒れるようにして眠りについた。






















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