表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

17話 備え

『な、なんて危ないことを!!

そもそもでユキト様はご自分の身の尊さを分かっていらっしゃらない。私達にとって貴方がどれほど…………』


今日の夜の会議で《虫喰らい》について話した。話したのはいいが、心配性のファイがここぞとばかりに俺に説教してくる。おかげで話が進まない。


『落ち着くでありんす。ユキト様も無事でありんしたのですから今はその《虫喰らい》への対策の方が先決でありんしょう?』


終わらないファイの小言を止めたのは《白銀鎧蜘蛛(しろがねのよろいぐも)》に進化したユラ。ファイも同時期に進化したユラには敬意を持っているようでユラの理を認めて大人しくなった。

流石はユラ。今、この場でのナンバー2は確実に彼女だろう。


「よし、なら今後の対策の話に移るが良いか?」


隊長格の蟲、というよりファイに問いかける。


『…仕方ないですな。しかし、ユキト様、どうか御自分の身も語案じください。』


「わかったわかった。」


本当は全然分かっていないのだが、適当に相槌を打っておく。

ファイが睨んでくるがそれは無視。


「巣の周りに無限蟲を何匹か配備し、見張りはさせる。

後は巣の周りにありったけの落とし穴を作ろうと思う。」


『となると、建築魔蟻が多数必要だな。』


《砲台魔蟻》のギーグが言う。


「それは手っ取り早く俺が創造しちまうよ。」


『私の隊からも蜘蛛を何匹か出すでありんす。』


「それは頼んだ。」


蜘蛛は残念ながら俺には創造できない。故にユラの申し出は非常に助かる。


「それと、ガンツ、ギーグ、リリーが進化次第、《命の木》に更に近付こうと思っている。」


《命の木》にはファイ達【チーム騎士団】に行かせてはいるが、決して奥には進まないよう言い聞かせている。あそこの周りは《命の木》に近付けば近付く程、より強力な植物魔物が出るらしいので、まだファイ達には早いという判断からだ。ファイはその言いつけをよく守ってくれている。


『総力戦ですね。しかしそれでは巣が無防備になってしまいます。』


確かに。今までは必ず一チームが巣に残っていた訳だが、総力戦になれば当然巣は手薄になる。しかし、酷い話になるが、総力戦時には隊長格の蟲を含め、強い蟲は全て連れて行くつもりでいるので例え巣が潰されてもいくらでも換えがきく。痛いのは雌魔蟲を失うことぐらいか。


「総力戦時には巣の入り口を埋める気でいるし、大丈夫だろう。」


巣の入り口を土で埋めてしまえば見た目的には殆ど巣があるとは分からなくなる。そうすれば、危険はガクンと減るだろう。


「明日から皆、精進しろ。《命の木》、攻略する気で行くぞ。」


『『『『『『御意』』』』』』











『ユキト様。』


会議が終わった後、俺に話かけてきたのはリリーだった。


『蟻種の幼生体が成体になりそうです。』


いろいろあって忘れていたが、そう言えばそんな事を言っていたのを思い出した。


「分かった。様子を見に行くとするか。」


俺が想像した蟲とどう違うのか確かめてみなければ。










『ここです。』


リリーに連れられて繭部屋に着いた。中には十ほどの繭が所狭しと並んでいた。おそらく、全て同じ日に生まれた個体達だろう。


「おっ。」


一匹の個体が繭を破って現れた。


「アリス、あれは魔蟻か?」


近くに他の蟲がいると話すことは滅多にないアリスだが、今回ばかりは思わず聞かずにはいられなかった。

繭から現れた成体の蟲は魔蟻のような体をしているが、ただの蟻というよりは棘蟻のようである。戦いにより特化した蟻、そんな風な印象を受けた。


『あの子も間違いなく魔蟻よ。』


「卵から育った蟲は随分、ゴツくなるんだな。」


『その分、強いわよ。』


まぁ、それは今後確認していけば良いだろう。


繭から出てきた十匹は結局、《魔蟻》が七匹、《酸魔蟻》が二匹、《建築魔蟻》が一匹となった。

それぞれ、俺が生み出した魔蟲よりもゴツい印象を受ける。


『リリー様!!』


成体となった蟲達がリリーに寄っていく。リリーは幼生体の世話をしていると言っていたから懐かれているのだろう。


『その方は誰?』


一匹の蟲が俺の方を向いて訊ねてきた。


『この方はユキト様。私達の創造主ですわ。』


『創造主?』


よく分かっていない様子。どうやら卵から生まれた蟲は生まれつき俺に忠誠心があるわけではなさそうだ。

「俺は部屋に戻る。この蟲達の世話は任せた。」


『御意。』


リリーと成体となった蟲を残して部屋に戻る。





「卵から生まれた蟲は俺の言うことを聞くと思うか?」


一人になったところでアリスに聞いてみる。


『どうかしらね。少なくとも直接の支配下にはおけていないみたいだけど。』


「まぁ、隊長格の蟲と俺がいれば例え反逆されてもどうにかなるか。」


とはいえ、流石に寝込みなんかを複数匹で襲われたら堪らない。成体になった蟲はしっかり教育していく必要がありそうだ。




◆◇◆◇◆


「今日は落とし穴を作る。だからユラは俺と来てくれ。」


『分かりんした。』



「それと昨日、成体になった蟲が現れた。そこで、成体になった蟲達の教育を皆には頼みたい。」


結局、新しく成体になった蟲は隊長格の蟲に任せることにした。


「今回成体となった蟲は十匹で全て蟻種だ。皆で相談した後、引き取ってくれ。


今後、成体となった蟲の教育は皆に任せる。チーム内での教育方針は各自で決めてくれてかまわない。」



成体となり知能も高い蟲達が入ることによってこの群がどうなるか、今から楽しみである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ