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14話 大っきくなります

俺達はゴブリンに獲物を横取りされて仕方なく巣に戻った。


『ゴブリンは鼻が良いから《剛毛猪》の血の臭いで来てしまったのでしょうね。

まぁ、こういう日もあるわよ。』


ゴブリンに負けたのはやはり悔しい。だけれど今はゴブリンには勝てそうにない。

いや、罠を使えば何とか倒せるだろうがゴブリン一匹を倒したところで意味は少ない。むしろ、ゴブリン一匹を下手に倒して仲間に復讐される方がよっぽどマズい。

そういう訳で現状、ゴブリンはどうしようも無いというのが結論である。


『そういえば、隊長格の蟲にそろそろ進化する個体が出そうよ。』


《隊長》を付与してから数日が経った。《隊長》の蟲はチーム内の蟲の経験値も得られるから成長が早い。確かにそろそろ進化する蟲が出てもおかしくはないだろう。


「どの蟲だ?」


『《氷結蜘蛛(アイスタランチュラ)》のユラ、《騎士魔蟻(ナイトアント)》のファイ、《兵隊魔蟻》のカゲツの三匹がそろそろ進化するわね。

他の隊長達も後少しで進化しそうだけど。』


【チーム蜘蛛(スパイダー)】は罠により、一定量の魔物を狩れる為に成長が早いのだろう。【チーム騎士(ナイト)】はひたすらに植物魔物達と闘わせたからこちらも大量の経験値を得ている。カゲツは《兵隊魔蟻》であるが故にレベルアップに必要な経験値が少なかったのだろう。

まぁ、順当な結果と言っていい。


「いつ頃進化しそうだ?」


『この調子でいけば明日には進化するんじゃないかしら。』


明日か。蟲達が今度はどんな進化を見せてくれるのか実に楽しみだ。



◇◆◇◆◇






「今日は俺は狩りに出かける。」


昨日は罠作りで一日の大半を過ごしてしまったので今日は無限蟲の育成に当てたい。


昨日の《剛毛猪》がゴブリンに横取りされた事は隊長格の蟲には話したので俺単独の行動に皆不安そうな表情をする。

蟲の表情は慣れないと分かりにくい。が、慣れると案外愛嬌のある顔に見えてくるから不思議だ。


話がずれたな、戻そう。俺の身を皆が案じているという話だったわけだが、特に心配性なファイはウザイくらいに俺の心配をしてくる。

いつも通り強く命令して静め、俺は外に出る。



「はぁ、ファイにも困ったものだ。」


既に毎日の一コマになりつつあるファイとのやりとりだが、何とかならないものか。


『いい手下を持って幸せじゃない。』


確かに素晴らしい手下ではある。そこに文句を言う訳ではない。

要は俺が少しばかり我が儘を言っているだけなのだ。


「よし、気をとり直して《剣兎》でも狩りに行くか。」


剣兎は一昨日、確実に勝てるようになった魔物だ。まずはそいつで俺と無限蟲のレベルを底上げしてから次の強敵と闘う算段である。







「ふぅ、さすがにこれだけ闘うと大変だな。」


今日は結局、剣兎を五匹も倒した。そして今は巣に戻って毛虫の布団で寛ぎ中だ。

剣兎、五匹は魔蟻達に解体させて肉は倉庫に運んでもらった。毛皮は何かに使うかもしれないので急遽建築魔蟻に部屋を用意させてそこに保管してある。

兎が五匹もいれば当分は食糧に困らないかと言われれば実はそうでもない。いや、この間までは剣兎一匹でも食糧としては充分だったのだ。しかし、日に日に幼虫の食欲と数が増えている今、剣兎五匹だけでは心許ない。それに雌魔蟲の食欲も爆発的に増えてきている。そろそろ真剣に食糧問題に打ち込まないと危険かもしれない。




『ユキト、今日で新しい特性が増えたみたいよ。』


特性が進化以外で増えるとは珍しい。


「見せてくれ。」




《雪兎》

Lv:20

種族:邪毒蟲


特性【無限進化】【蟲を統べる者】【肥大化】


スキル【魔蟲の創造】【麻痺毒生成】【階級付与】


創造可能種

《魔蟻》

《兵隊魔蟻》

《酸魔蟻》

《甲殻蟲》

《角殻蟲》

《建築魔蟻》

《雌魔蟲》

《無限蟲》



猪を倒したお陰か、レベルはかなり上がっている。これなら今後も大きな罠を作っていった方がいいかもしれない。

それは追々考えるとして、今は増えた特性【肥大化】についてだ。


「【肥大化】とはなんぞや?」


知らないことはまずはアリスに聞くべし。


『【肥大化】は脱皮を繰り返して徐々に大きくなっていくことができるようになる特性よ。もちろん限界はあるけれどね。どんなに頑張っても山のように大きくはなれないわ。

後、この特性は群の蟲にも伝播するみたいだから、群れ全体がこれから徐々に大きくなっていくわね。ただし、種族ごとに限界値は異なるみたいだけれど。』


ふむふむ。つまり、この小さい小さい生活に終わりを告げるということですな。


この特性は正直、大いに助かる。数は力というのは真理であるが、大きさは力というのもまた真理なのだ。今のままではどんなに数を増やしても山のような大きさの魔物には勝てない。だが、こちらの大きさが変われば数によっては山のような魔物にも勝てるかもしれない。つまりはそういうことなのだ。


『脱皮あとの数時間は身体が柔らかくて防御力が低い状態になるからそれだけは注意しておいて。』


そうなると、巣の中で脱皮させるのが得策か。敵の真ん中で脱皮なんてしまったら大変なことになる。


そんなことをしている間に夜の会議の時間になってしまった。




『私達は今から進化に入ります。』


そう言ったのは《騎士魔蟻》のファイ。アリスの予想通り、ファイとユラ、それとカゲツが進化に入るようだ。


「分かった。なら明日は全員で巣に残り、守りを固める。」


他の蟲ならともかく、隊長格の進化は特別なものだ。というのも、一匹一匹の進化が群全体の力の底上げになるのだから。



いつも通り三匹は繭となって眠りについた。起きるのは明日だ。


「そうだ、新たな特性【肥大化】の説明をしておこう。」


本来なら今繭になっている三匹にも聞かしておきたかったのだがタイミングを逃してしまった。まぁ、明日進化してからでいいだろう。




『分かりました。メンバーにもそう伝えておきましょう。』


端的に言えば『脱皮する時は巣の中でやれ』ということを蟲達に説明して今日の会議は終わった。




◇◆◇◆◇



次の日の朝。今日は全員狩りには行かず、巣の中で警戒に当たらせている。




『そろそろ幼生体から成虫へとなる蟲が出そうですよ。』


朝の会議、いつもより三匹少ないその場所で《鈴音の癒蟲》のリリーがそう告げた。

リリーは隊を持たない代わりに幼生体の育成に関わっていたらしい。そんな幼生体を一番近くで見てきたリリーが言うには昨日、(さなぎ)になった幼生体が現れたそうだ。

蛹の部屋も急遽、建築魔蟻に作らせ、孵化するのを楽しみに待つことにした。






















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