11話 隊の編成
俺と同時期に進化した蟲の説明をしておこう。
進化した蟲は全部で23匹で
《兵隊魔蟻》×8匹
《騎士魔蟻》×1匹
《砲台魔蟻》×2匹
《魔蜘蛛》×5匹
《鈴音の癒蟲》×1匹
《千命足》×2匹
《重殻蟲》×3匹
《二刃甲虫》×1匹
となっている。今回、新しく生まれた《魔蜘蛛》は《氷結蜘蛛》とほぼ変わらない容姿をしている蟲で《重殻蟲》は《甲殻蟲》を大きくした体にハンマーのような尻尾を持っている蟲、《二刃甲虫》は見た目はクワガタである。
次に進化した蟲達はそこで待機させ、名前持ちの蟲を召集する。
召集した蟲に【階級付与】で《隊長》を付与する。
階級を付与する際、俺には対象の蟲が条件を満たしているか何となく分かった。
証拠に、俺が無理だと思った蟲に何度試してみても階級は付与できなかった。
《隊長》を付与した蟲は《氷結蜘蛛》のユラ、《鈴音の癒蟲》のリリー、《兵隊魔蟻》のカゲツ、《千命足》のガンツ、《砲台魔蟻》のギーグ、《騎士魔蟻》のファイ、と結局、名前持ちの蟲は全て付与することができた。
しかし、同じ進化後の蟲でも、今進化したばかりの蟲には付与はできなかった。何らかの条件が足りないのだろう。
《隊長》となった蟲には早速、進化した蟲に名前を与えるという仕事を与えることにした。知能が極端に上がった彼等ならそれも難しくないという判断だ。
ぶっちゃけた話をするなら正直、名前を考えるのが疲れた。これからも増え続ける進化した個体にいちいち名前を付けるのは面倒くさい、というより不可能だ。だから、隊長達に考えさせる。自分の隊に入るかもしれない蟲なのだ、彼等が名前をつけて、彼等が知っていれば構わないだろう。俺が知っておくのは隊長クラスの蟲だけで十分だ。
さて、次は隊を分けなければならない。
隊長は全部で六匹だが、戦闘力のない《鈴音の癒蟲》は戦闘隊に入れることは止めておく。《鈴音の癒蟲》は貴重な回復要員だ。数が揃うまでは外に出すことをしたくない。
となると、残った五匹の蟲にそれぞれ蟲を割り振ることとなる。
しばらく考えた結果、こういう構成となった。
【チーム蜘蛛】
リーダー:《氷結蜘蛛》
メンバー
《魔蜘蛛》×5匹
《兵隊魔蟻》×15匹
《角殻蟲》×10匹
《酸魔蟻》×15匹
罠を張ったり、蜘蛛の糸で拘束したりして相手の動きを止めた後、一方的に攻撃することを前提にしたチーム。
森のあちこちに蜘蛛の巣を張らすのもいいし、落とし穴を作らせてもいい。その場合はチームに建築魔蟻をいれた方がいいだろう。
【チーム軍隊蟻】
リーダー:《兵隊魔蟻》
メンバー
《魔蟻》×70匹
《兵隊魔蟻》×30匹
とにかく数で押すチーム。そのうち蜘蛛種に数の余裕が出てくれば蜘蛛種も投入したい。
このチームは強い敵ではなく、比較的弱い魔物を数狩ることを目的として構成した。
【チーム八百万の足】
リーダー:《千命足》
メンバー
《千命足》×2匹
《兵隊魔蟻》×20匹
《酸魔蟻》×15匹
このチームは《千命足》の機動力を生かすチーム。できればもっと百足種を入れたいのだが、今は数が足りないので、比較的機動力の高い蟻種をいれた。
【チーム移動要塞】
リーダー:《砲台魔蟻》
メンバー
《砲台魔蟻》×2匹
《酸魔蟻》×15匹
《甲殻蟲》×20匹
甲殻蟲を盾に酸攻撃を後方から撃ちまくる構成。
対空中戦もできる唯一のチーム。
【チーム騎士団】
リーダー:《騎士魔蟻》
メンバー
《騎士魔蟻》×1匹
《兵隊魔蟻》×15
《重殻蟲》×3匹
《二刃甲虫》×1匹
個々の能力が高い蟲を集めたチーム。植物魔物などの個々は弱い魔物達に有効。強そうな蟲が現れた場合はとりあえずここに入れて様子見する気でいる。
まだメンバー数が少ないが、もう少し増えていけば、かなり強力なチームになるだろう。
このチーム構成は卵が孵ってより強力な個体が生まれたり、進化した蟲がいたりしたら交代、または追加する。
よし、とりあえずこれでチーム構成は終わった。チームメンバーはリーダーに管理させることにして、俺は今度は巣の増設に努めなければ。
新たに必要になったのは卵部屋と幼虫部屋。後はチーム内の親睦を深める為にチームごとの部屋、隊長の個室も必要だろう。
魔物に襲われないように地下深くに作る。更に卵を見守る魔蟻、幼虫の世話をする魔蟻を用意する。
そのうち、幼虫から蟲となったもの達に教育を施す魔物も必要になってくるだろう。今はまだ、これくらいしかできないが。
必要に迫られたらまた付け加えればいいだろう。
これで予定していたことは全て終わったわけだが、新たな、というか前々からあったにはあった問題が浮上してきた。食糧問題である。
野菜はまだいい。植物魔物がごっそり出る場所を知っているからそれを狩りに行かせれば問題ない。だが、タンパク質が極めて少ない。今はまだ周囲に魔物がうようよいるから大丈夫だが、これらを狩り尽くしてしまったら今度こそ死活問題となってしまう。
家畜になりそうな魔物を見つけた方がいいだろう。
「アリス、家畜になるような魔物っているか?」
『《豚蜥蜴》なんかかしら。でもこの子は今の私達には手に負えない魔物よ。』
そうなんだよな基本的に俺達、蟲はまだまだ弱い種族だから家畜にできるような魔物っていないんだよ。家畜の世話ができるような高度な知能を持っている蟲もまだ隊長格の蟲だけだし。しかし、さすがに隊長格の蟲に家畜の世話をさせるのは勿体無いしな。
仕方ない、今のところは周囲の魔物が尽きないことを祈るしかないか。最悪、群れごと移動すればどうにでもなることにはなるし。それこそ軍隊蟻のような生活をすることになるだろうけど。