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横断歩道

作者: SYAY0U

とある横断歩道で信号待ちをしている時にそれは起こった。

その横断歩道は向こう岸との幅4メートルぐらいのわりと狭い横断歩道で、信号が赤でも人がいないと無視してしまいそうな横断歩道だった。でもそこはそれなりに駅の近くにあり、スーパーもあるしなにしろ夕方だった。


私はその時自転車に乗っていて、前の道には車が全然通っていなかったので、非常に渡りたい衝動に駆られていた。

しかし向こう岸に6,7人、こっち側に高校生の軍団やら10人ぐらいがその狭い横断歩道を待っていたため、私の中にあるモラルや見栄、もしくは注目を集めるのを嫌がり、自制心が働いて渡れずにいた。


その時だった。左から何か出てきたなと思って見てみると、そそくさと老婆が渡っていくではないか!ほぼ髪全体が白髪の補助カーを押した80歳ぐらいの老婆だ。

もちろんできれば周りのみんなもすぐに渡りたいはずであるし、それはもう周りの視線が一気にその老婆に集中した。

左の方では部活帰りっぽい垢抜けない男子高校生5人組が見ているし、後ろには女子高生2人組がいる。向こう岸には道でばったりあったら延々と話が続きそうな主婦2人組がひそひそと白い目で見ているし、その横にはちょっとギャルっぽい大学生もいる。


そんな中をその老婆は渡って行ったのだ。私も驚いてその老婆の動きを無意識に追っていたが、この動きがまたなんともまずい。

それは確実に本人が悪いことを自覚しながら渡っていく動きなのだ。ボケているとか「あぁこういう変な人なんだ」と思わせるような動きではない。申し訳なさそうにそそくさとキョロキョロと小走りに渡っていくのだ。

果たしてこの老婆には補助カーが必要か等とそういう疑問もちらっと脳裏をよぎったが、そんなことはどうでもいい。


渡りきる頃にはもう信号も赤から青に変わろうとしている…私は声を大にして叫びたい気持ちでいっぱいだった。老婆よ、いったいその先になにがあるのだ?


危険を省みてまで、赤信号待ちほぼ全員の非難をかってまで、そこまでしていったい老婆はその先に何を見ていたのか、何があるというのだろうか?


信号が青になったあと、私は颯爽と自転車を漕ぎだして、いとも簡単に老婆の横を抜き去った。











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― 新着の感想 ―
[一言] 題材はオリジナリティに富み、さらに文章の吸引力もあります。一息に読んだのですが、読んでいる最中はストーリー評価5。文章評価3。だろうなと思っていたのですが、読み終えたときには共に3になってい…
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