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第五話

「ここ?」


「……あ、痛っ…」


白いカーテンが風に揺られる度、木漏れ日が部屋に差してくる。

部屋に充満した消毒液の匂いが鼻につんとする。

ちなみに何故かは分からないが、このアルコールの匂いが私は好きである

大抵変人扱いされることに私は納得がいかないが。


整然と並ぶベッドは10を越え、敷かれた白いシーツはまるで新品のようにノリが効いている

これらも相まって清潔感をより一層のものにしている


――この学校の保健室はやたらと広く、綺麗であった


「んー……捻挫してるかもしれんな、病院行くか? でも、流石に入学式はでたいよな?」

と、粗野な言葉を操る女校医さんが私の右足首に湿布を貼ってくれた。


長い黒髪により映えた白衣には、東海と書かれたネームプレートが申し訳なさ気に留まっている


「は、はい!」



馬鹿なことに私はさきほど足をくじいてしまったのだ。

というのも両手に抱えた本たちによる視界不良と私の不注意のせいで、先輩にぶつかってしまったからである


その先輩がとてもいい人だったことが唯一の救いであろう


パンツはみせるものとばかりに、文鎮となる本たちを手早く整理してくれた上、私を保健室までおぶっきてくれた優しい人である。


壁に寄り掛かったその人が口を開く


「…おいしいんじゃないか?」


「「は?」」


と、先生と私は先輩の言動に疑問符をぶちあてる


「佐藤君…お前、まさか…噂だと思っていたが本当に人の不幸で飯が食えるのか!?」


「先輩…やっぱ頭弱いんですね…」


先輩は私たちの攻撃に一瞬うろたえた


「違ぇよ!俺らみたいにテンプレート通りな人生を送って来た人間には話のネタになるんじゃねぇかって!」


クールだった先輩が唾を吐きながら訴えてきた

あまりの気迫におされたが、初対面で普通人間認定をされたことに腹が立った

慌てて体制を整え、


「…か、勝手に人をつまらない人間みたいにゆわないで下さい!!」


「ほう?」


じっと私の目をみる先輩


「な、なんですか!」


「何か……君は、何か人に自慢できるような功績を残したことがあるのかい?」


「…っ!それくらいありますよ!」


「言ってみろ」


じりじりと顔を近づけてくる先輩を退けるため私はトッテオキを使った


(ごめん!斎藤さん!)


「……ぜ、全国ピアノコンクールで銀賞をとった…(友達がいる)」


「なっ!?新入生!君はそんなにすごい子だったのか!」

と、先生が感嘆の溜息を漏らす


この先生は言葉遣いが荒いのに随分と魅力的だなぁ、と女の私でも色気を感じる吐息に暫く聞きとれる

そう思いながら私も、今のやり取りの後ろめたさから溜息を吐いてしまう


「いや、嘘だな。人は嘘つくとき鼻の血管が浮く」


「…っ!?」

私は咄嗟に鼻に手をやるが、血管は浮き出てないようだった


「それは本当か!?佐藤君!?……これで嘘つきの高田先生をこらしめれる…」

と、先生が少女のような輝いた目で先輩をみやるが、先輩は鼻に手を置いた私をみて

「もちろん嘘だ。しかし、コイツが嘘をついていたことが分かったようだな。やはり……俺と同じ、か」

と、してやったり顔を向けてきた


「…くっ!…」


自分の単純さを呪うが時すでに遅し、一本とられてしまった…。

……ん?アレ?この感じ某漫画で…アレ?


「同志よ。仲良くしようか」

ゆったりとした動きで先輩が私の肩に手を回す


「お、お前ら!学校だぞここは!?た、確かに保健室で男女学生がいたら…このままベッドに行って……そし「何を言ってるんですか。」


ずびし、と私は顔を赤らめる先生の頭に手刀を落とす

同時に朝のホームルーム開始のベルがなった


最初のホームルームにいないのはまずい。

完っ全に浮いてしまう。


「私!大丈夫です!治りました!ありがとうございました!」


いきなり立ち上がった私に驚く先輩を振りほどき、頭を押さえた先生に向かって勢いよく頭を下げた


「ごちん!」


鈍い音と共に目の前に火花が散る

私は、やはり走った足の激痛と新たに得た頭の痛みによって再び椅子に座らされてしまった

更に先生には追撃をあたえてしまったようだ


やれやれと腕を組み、

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