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第二話

―――

最初に断っておくが、これはなんの技巧もないただの回想記である。

過度な期待はしないで欲しい。

誇張、妄想も若干含まれるが、私たちが過去に経験したことに違いはない。

8割方事実である。

それを踏まえた上で読み進めて欲しい。

当然だが、幼馴染で美少女の彼女がいたりだとか、突然右手がうずき始めて謎の異能力を発現したりなどは、一切しない。

ただ、世間で起きた奇妙な事件のことを、普通の高校生だった私たちの視点で書き連ねてあるだけである。




授業で習った知識をひけらかすわけではないが、こんな言葉がある。

「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」

孔子という偉人さんがおっしゃったようだ。

意味は十分に理解していてのことだが、嫌味にしか聞こえない。

なに、この言葉が特別嫌いってわけでもないし、俺はこの格言をもとに生きてきたわけでもない。

しかし、この格言は、常に回りにあるのだ。

というのも、俺が何をとっても普通であり、落ち込んだとき決まってこの言葉を誰かしらに投げかけられるからである。

俺の普通さを少しばかり紹介させてもらおう。

中学校3年間塾に通っていたのだが、塾内のクラス分けテストでBクラスから動いたことは一ミリもない。

身長172センチ、体重68キロ。

日本人男性の平均との差は小数点以下。

偏差値は常に50。

少し動いたとして、±2以下である。

全国体力テストもB。

グレたりもしていない。

彼女はいないが、仲の良い女友達くらいならいる。あっちがどう思っているかは知らないが。

常に付きまとうBという記号。平凡という二文字。

それを象徴するかのような俺の名前。日本一多い苗字と、平凡の平が混じった孝平。

いや、気に入ってはいるんだ。不満はない。

先生から叱られたことも、褒められることもない。

影がうすいわけじゃない。そう信じたい。


ただこんな俺でも、人より必ず大きい、といえてしまうものがある。

そう、欲望である。



まだ16歳という年齢も加わっていて、夢は見るものではなく、叶えるものだといった向こう見ずな思いも強い。

常に真ん中にいるため、何か変化が欲しくなり、高いとこを見始める。

そして上れそうにないと知る前に諦める。

最初から分かってるのだ。

自分には才能がないということは。

でも、やはり見続ける。これが俺だ。

人一倍、執着心が強く、デカいことを激しく夢見るのであった。


そんな俺も、普通の高校に入学して今日でちょうど2年になる。

縦のつながりは、昔から深くも浅くもないぐらいなので、後輩になど期待していなかった。


……はずだった。


なんだ、あの普通をテーマにして作られたような人間は。


自分で言うのもなんだが、俺ほどに一般人という言葉が似合う人間をはじめて目の当たりにした。


この気持ちはなんだ。


湧き上がる親近感。あふれ出る同情の念。

あいつとは仲良くなれるのではないかという確信。


両手で抱えた山積みの教科書を困惑した顔で見つめている彼女に、いつになくはずむ胸。


断っておくが、その困惑した顔に性的な魅力を感じたのでは、断じてない。


まずは先輩という威厳を身に纏い、顔を幾分か解してから、いかにも偶然を装いつつ、彼女にぶつかりにいった。

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