第一話
小さい頃は
同年代より少し上手に見える絵を描いて、よく親に褒められていた
褒められることの心地よさを初めて知った
特に努力した覚えはない
小学校に入学してからは
親に褒められるだけでは満足できなかった
学校のヒーローやアイドルを見ては、俺も誰かに認められたい、羨ましがられたいと感じ始めた
だからヒーローが入っているクラブにも入った。
続かなかった
自分には合わなかっただけ、まだ俺はガキだから何か眠った力があるだろう、と諦めた
特に努力した覚えはない
少しませ始めた10代。
地域から社会へ目線を移す。
同じ年代で活躍する選手、アイドル。世間からは羨望の目で見られる彼ら
自分を見つめてみたが
秀でたことはない、そればかりか仲の良い友人たちよりも頭は悪く、運動神経も劣る
……自分には、なにもない。
部活に打ち込み、爽やかに汗を流す友人を見ては馬鹿馬鹿しいと鼻で笑い、
かわいい彼女をもっている友人の愚痴や惚気を聞き流す
羨み、妬むばかりで、自分も何かを得ようと特に努力した覚えはない
代わり映えのない毎日
100万円か、はたまた、美女が空から降ってこないかと、ため息混じりに空を見上げる
ほらやるよ、とばかりに雨が頬を打つ。
「傘、置いてきたんだよ。ハゲ」と小さく舌打ちする。そんなある日。
世間が“ヨク”に騒ぎ始めた