これで戦いが終わったわけでは無い
地域住民一丸となって戸田弾正の猛攻に耐え抜いた船形山城。しかしこれで戦いが終わったわけではありません。船形山を攻めたと言う事実がある以上、今川から報復される事を戸田弾正は知っている。今川の本隊が今橋や田原に攻め込まれたらひとたまりも無い。これを防ぐためには……。
「是が非でも船形山を奪わなければならない。」
今日のいくさに勝つ事が出来たのは偏に弾正に油断があったから。彼が船形山攻略に本腰を入れられたら……。
(私に勝ち目は無い。)
「今日中に弾正を追い払うにはどうすれば良いものか……。」
思案に暮れる私に
「殿。弾正は普門寺に陣を構えました。」
普門寺は船形山城南麓にある真言宗の寺院で奈良時代からの歴史を持つ。
(舐められたものだな……。)
「船形山から一気に駆け下れば一網打尽!」
と威勢よく行きたいものだが如何せん兵が足りない。それに……。
(朝からのいくさで皆疲れている。)
夜襲を気にしなければいけないのはむしろこちらの側。ただ……。
(これだけなら良い。)
恐れなければならないのは……。
(多米に回り込まれる事。)
ここを取られたら船形山への補給が断たれる事になる。
「どうすれば良いものか……。」
「殿。」
「ん!どうした?」
「私に案があります。」
「何だ聞かせてくれ。」
「ただそれをしてしまうのは……。」
普門寺。
「多米の野郎。意外にやりよるな。ただ明日からは容赦せぬ!徹底的に締め上げてくれん!!私はここから船形山を目指す。そして……。」
家臣に指図する戸田弾正。そこでの指示は多米又三郎が危惧していた多米攻略からの城の封鎖。
「多少時間が掛かっても構わぬ。ここを押さえて初めて今川と相対す事が出来るであるからな。」
そこに……。
「ん!?火か?火の扱いには注意せよ。」
「殿。」
「どうした?」
「普門寺を隈なく見たのでありますが……。」
(建物の中に何もありません。)
「ん!?どう言う事だ?」
そこへ……。
「申し上げます。寺のほうぼうから火の手が!!」
船形山城。
「このいくさを今日中に終わらせるためには……。」
(普門寺を焼き尽くすしかありません。)
「全ての罰は私が受けます。殿に迷惑は掛けません。今は……。」
(明日も生き延びるための最前の策を採りましょう。)
「……申し訳ない。」
火の手は瞬く間に戸田弾正が本陣を構える普門寺に。
「あいつ何考えているんだ!今川からここも守るよう命じられているはずであろう!!」
しかし
「仕方ない。全軍撤退する!!」
明朝。船形山の麓から戸田軍は姿を消したのでありました。
「勝った。しかし……。」
(今川氏親にどう説明しよう……。)




