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船形山城

 船形山城は弓張山地から派生する山稜の一角標高280メートルの船形山に築かれた城で、すぐ近くの尾根伝いに鎌倉街道の峠道が走る交通の要衝。今川にとってこの城は三河再進出のため、是が非でも維持したい城。逆に戸田弾正から見た場合、船形山を押さえる事が出来れば渥美郡を統一する事にも繋がる。双方重要な城となっている事に当の私は……。

(気付いていませんでした。)

先程

「自分で戦う他無い。」

と力強く宣言したは良いものの……。

(全くと言って良い程、備えを施す事が出来ていません。)

だって……。

(今川に逆らう気が無かったのでありますから。)

力関係を別にして、同盟している相手との境目には手を付けないのがエチケットであります。


 とりあえず多米の方々をかき集める私。幸い皆が皆協力していただく事が出来たのでありましたが……。

(全ての曲輪に兵を配置出来るだけの住民は居ません。)

それどころか

(約半数の方々は女性とお子様であります。)

それでも

「共に戦います。」

と仰っていただけた事に感謝。

(さてどうやって守ろうか?)

と思案に暮れていた所……。

「どうせ敵も我らが小勢である事を見抜いているでしょう。それに敵にとってこのいくさは、今川と手切れするためもの。派手な戦果を狙って来るのが目に見えていますから。」

(私はこの言葉を信じた。)


 戸田弾正が船形山の麓に来た。そして……。

(遮二無二ほぼ全ての住民が集まる本丸目掛け突進して来た。)

弾正に降伏開城させると言う選択は存在しない。仮にあったとしてもこれに応じるつもりは無い。我らの君主は今川のみ。今川の傘の下が無ければ、我らは生きて行く事が出来ない。


 私は陣頭指揮に立った。敵が近付くや男には石を。女性や子供には灰や砂を投げる事を指示。敵が怯んだ所に弓矢を浴びせ、敵を後退。これを幾度と無く繰り返すのであった。幸い弓矢に不足は無い。ただ……。

(外に飛び出して敵を追い散らすだけの兵数は無い。)

戸田弾正の兵を追い払えど追い払えど新たな兵を送り込んで来る。いつになったら敵は……。


 そう考えていた所に

「お粥を持って来ました!」

の声が。

「今、それ処ではありません。」

と丁重に断りを入れようとした私に

「食べるためではありません。」

との返答が。

(どう言う事?)

と思っているや否や……。

折角持って来た熱々のお粥を敵に目掛け投じる女性。

「何をしているのでありますか!?」

の声を出そうとした。丁度その時……。

「何だこれは!?」

の敵兵の叫び声が。

「鎧の内側に入り込んだお粥は取れないんだよ!火傷したくなかったらとっとと逃げな!!」

の主婦の声。

 後退する敵兵を見て、曲輪から打って出る事を決断。思わぬ反撃に遭った戸田勢は後退。一時の危機を脱するのに成功したのでありました。

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