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暗黒戦士アスケード  作者: ミミササ
第一章 暗黒戦士編
6/6

ep.6 デビュー戦

 数日後、静岡県浜松市中央区にて怪人出現。


「僕はサソリの怪人スコル・クラン。君達には人質になってもらうよ」

「ひっ!」


 右手の肥大化した毒針を人質に向ける。

 スコル・クランと名乗る紫色の怪人は戦闘員を引き連れ、銀行に立てこもり中。


「怪人は人質5名に危害を加えていませんが、はたして要求はいったい何なのか、爆裂戦隊はいつ来てくれるのか!引き続き番組は怪人の動向を皆様にお伝えしていきます」


 戦隊本部の指令室に集まった焔たち5人はテレビから流れてくるニュースを前に何もできずにいた。


「なんで出撃させてくれねえんだよ!四季さん!」

「そうですよ、僕たち爆裂戦隊の役目は怪人を倒すことです」

「オレ達はその為に戦隊に入ったんだ」

「皆さま、落ち着いて下さい」

「冷香さんの言う通り、一旦落ち着こう」


 戦隊司令官である四季 鈴徳(しき れいとく)に詰め寄る3人を冷香と(かける)はなだめる。

 それもそのはず、怪人が現れてから3時間経っていると言うのに爆裂戦隊である5人は出撃できないでいる。その理由は戦隊司令官である鈴徳の許可が下りていないからだ。


「でも、皆さんが怒る気持ちはわかりますわ」

「鈴徳さんが出撃命令を出さない点についてはボクも思うところはある」


 庇った2人も決して味方と言う訳だは無い。戦隊全員が司令官に対して思うことがある。だが、その理由もわかっている。


「……怪人の要求、ですか」

「そうだ」


 流の答えに鈴徳は答える。

 未だ世間に公表されていない怪人の要求。それはいったい何なのか。


「爆裂戦隊の解散とリングの要求、それが警察が聞き出した怪人スコル・クランの要求だ」


 人質を取ってから数分後、戦隊が出撃する前に警察から怪人の要求を聞いていた鈴徳は出撃命令を出せずにいた。

 戦隊の解散とリングの要求、これが意味するのは地球の降伏でもある。


「だからってこのまま、見過ごすわけにはいかないだろ」

「あと1時間ちょいで人が1人死ぬんですよ」


 力也と流は現状に危機感を持っている。怪人からの要求に加え、4時間に1人を殺すと言う話に焔は苦悶の表情を浮かべる。


「俺は……俺達は、怪人を倒して人質を救いたい…………」

「わかっている、だが……」


 戦隊側に残された選択は人質が欠ける気での救出か、今のままを維持するか。

 苦しい選択が時間と共に強いられる中、テレビの中継から驚きの声が聞こえる。


「おおっと!怪人のいる銀行に向かって爆裂戦隊の1人が突っ込んでいくぞ!」

『なに!?』


 その場に居た全員が驚きの声を上げ、辺りを見回す。

 ちゃんと5人全員がこの場にいる。じゃあ、いったい誰が向かったと言うのだろうか、テレビに目をやる。


「誰だい?キミは」

「俺の名はアスケード。暗黒戦士アスケードだ!」

(うわああああ!恥ずかしい!こんなこと言わなきゃいけねえのかよ!)


 スコル・クランに立ち向かったのは闇の力で変身した志だ。

 数日前までの憧れていた頃とは違い、今の名乗り方に羞恥心を感じてしまう。


(第一、テストだからって名乗りまで必要なのかよ!)



 ――数日前の保健室での記憶を掘り起こす。

 おじさんと表示された画面から声が聞こえてくる。


「初めまして、君が志くんだね」

「そうですけど、貴方は?」

「わたしは四季 鈴徳。戦隊の司令官を指せてもらっている者だよ」

「えぇー!?」


 驚きのあまり声が出る。

 戦隊の司令官と言えば、戦隊に関する権限と責任を持つ重役だ。立場もそれなりにある。


「君にはいくつかのテストを受けてもらう」

「テストってなにをするんですか」


 できるだけ失礼のないように話す。


「簡単な話、怪人と戦ってもらう。それだけだ」

「それだけって」


 簡単に言ってくれるが、初心者のこっちからすればハードルは高い。


「テスト開始の合図は君が名乗りを上げてからだ」

「えっと……名乗りって」

「ん?ああ、それは――」

「――暗黒戦士アスケード!」


 思い出しただけで顔が熱くなる。

 戦隊側でもなければ怪人側でもない俺が戦士名乗って怪人と戦う……前までなら想像もできなかったが、いざ人前で戦うとなると……めちゃくちゃ恥ずかしい!。


「戦隊側の人間……ではなさそうだね」

「まあ、そうだな」

「じゃあ、交渉決裂ってことで」


 左腕に抱きかかえた人質に向かって毒針を刺し込もうとしたその時、視界が暗転して地面にドサッと倒れる。


「あれ?」


 一瞬の出来事に理解が追い付けないでいるスコル・クラン。

 かろうじて動ける首を動かし、視線を下に移すと千切れ飛んだ両腕と下半身がバラバラになっていた。


「キミ、なにしたの」

「俺か?」


 人質を抱きかかえ、救出したアスケードに向かって問いを投げかける。

 あまりの惨状に当事者であるスコル・クラン自身もなにが起きたのか理解できない。


「俺はただ人質を救出しただけだ」

「ふ……ざ…………け…………」


 最後までよくわからないまま、怪人は黒く消滅する。

 他の人質についていた戦闘員も気が付けば全員消えている。


「さて」

(どうするかな……)


 テストの開始条件までは知っていたが、その後の事までは考えていなかった。

 やばい、どうしよう……。


(つか、呼び出した張本人から連絡来ねえんだけどぉ!!)


 救出した人質を下ろす。

 「戦隊が動けないから、君が言って解決してね。これがテ・ス・ト・だよ」とか連絡よこしたくせに!既読すら付けねえとか……俺、どうなんのかな。


「あ、あの!」


 今後の事について考え込んでいると人質にされていた人たちから声を掛けられる。


「戦隊の方……ですよね?助けていただいてありがとうございます」

「俺達、ほんとう、もう、死ぬんだと思って……」

「かっこよかったよ、おじさん」


 皆、口々に感謝の言葉を述べる。

 誰も、戦隊すら助けに来ない状態での死の淵からの生還。そこにいる戦隊とも怪人ともとれる存在は生還者からすればヒーローの様な存在だ。


「あー……っと、実はですね」

「お名前を聞いても良いですか」

「え!?」

「すみません、戦隊では見たことのない姿でしたので」


 その問いに心拍数が一気に跳ね上がる。


(ど、どうする!俺は今、戦隊とは協力関係にある状態だ。正直言って戦隊側だと滅茶苦茶名乗りたい……!でも、立場が立場だ!もし勝手に名乗ったらどうなるか……)


 輝夜相手には強がっていたが、心の底では戦隊側に就きたいし、戦隊を名乗りたい!最初は輝夜の怪しさから、警戒していたが今となっては状況が違う。

 究極の二択を迫られる。


 焦るその時、スマホの通知音が鳴る。


(通知音!いったいどこから……)


 音色的に俺のスマホで間違いない。しかし、スマホは変身前にズボンのポケットに入れていた、取り出すには一度変身を解かなければいけない。


 体をまさぐってどうにかスマホを取り出せないか探していると、もう一度通知音が鳴る。音の位置は腰についているベルトのポケットからだ。


(あった!)


 スマホを取り出して、内容を確認する。


(えっと、『終わったら適当に逃げてね♪』……だと)


 音符をつけてかわい子ぶっているが、要するに自力で何とかしろ、と言う事だ。

 ふざけている。直感的に思ったことは輝夜になめられ、遊ばれていると言う事だった。

 志はあまりの無茶ぶりと無計画さにイラ立つ。


「あ、あの野郎!」

「ひっ!」


 志の気迫に助けた人質は小さく悲鳴を上げる。

 ・・・怒っている余裕はなさそうだ。今回のテストの内容は怪人と戦う事。怪人は倒したし人質も無事に助けた、ならもうやることはない。

 早いとこ撤退するとしよう。


「あ、あの」

「あ?」

「な、お名前を聞いても……」


 そう言えば名前を聞かれている途中だった。

 戦隊側?と言う訳ではあるのかわからないが、一応名乗っておこう。


「俺の名前はアスケード」

「アス……?」

「暗黒戦士アスケードだ。じゃ」


 輝夜の話からして闇の力は怪人の力であって、戦隊ではないと言う訳だから暗黒戦士と名乗っておくことにした。

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