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暗黒戦士アスケード  作者: ミミササ
第一章 暗黒戦士編
3/5

ep.3 暗黒戦士アスケード

 闇の力に包まれて、怪人の姿に似た新たな暗黒の戦士が現れる。

 紫を基調とした戦隊とも怪人とも言い難い姿、その姿を見たネックスは目を細める。


「なんだ、その姿は……」


 突然の変身に疑問をぶつける怪人。その姿は爆裂戦隊の様なヒーローの見た目とは打って変わり、怪人の様な姿に似すぎている。


「わからない……」


 志自身、この力が何なのか詳しくは知らない。謎の声が言うには闇の力、それがこの力の正しい名だとするなら……。


「そうだな……これは俺の、暗黒戦士の力だ!」


 志は勢いよく地面を蹴り、一瞬にしてネックスの顔面に拳を叩きこむ。


(早い……!)


 怪人が攻撃に反応するよりも早く、叩き込んだ拳は腹部にめり込み、怪人は宙に舞う。


(このパワー、おそらく爆裂戦隊よりも強い!それに……このスピード、俺より早いだと!!)


 驚きつつも分析を始める。

 志の一撃はかつて先代爆裂戦隊との戦闘を思い出させるほどのパワーがあった。それだけなら問題はなかった。だが、スピードも上だとなると話は別だ。


 ネックスの怪人としての強みは獲物を狙ってから、捕らえるまでの初速。それを上回るスピードを出せる志はネックスにとって勝ち目がないも同然である。


「やられてたまるかああぁぁぁ!」


 かつての戦隊に対する恐怖と自身のプライドをへし折られた怒りでネックスは地面に足をつけ、狙いを志に定める。


「勝負だ、暗黒戦士!俺のスピードとお前のスピード!どちらが早いか――」

「遅えよ」


 再び飛んできた志はネックスの懐に入り、拳を叩きつける。


 地に足着いた怪人が、ただただ突っ立って勝負宣言している。

 そんな、状況で攻撃しないバカがどこに居る。

 

「お、お前……」

「じゃあな、狐野郎」


 地面に倒れ込む怪人は塵となって消え行く。

 怪人はある一定の許容量を超えたダメージを受けると消滅する。昔助けてくれた先代ブラックの戦闘で知った事だ。


「やるじゃないか」


 リングの中から謎の声が聞こえる。


「…………」

「どうした?」

「いや……どうして、リングから声がするんだろうなって」


 このリングが力をくれたことはわかった。だが、怪人と言っていたわりには姿は見えない。現に声の主はリングなわけだし。


「色々と事情があるんだよ」

「その事情とやらを教えてほしいんだけどさ」


 ハッキリ言ってこの力の事は闇の力と言うこと以外何も知らない。

 突然現れては力が欲しいか問われて、欲しいと言ったらバクレツリングとは違う黒いリングを渡された。そして変身ができた。


「第一、なんでお前は俺に力をくれたんだ?怪人だろ」


 聞きたいことは山積みだが、まずは何故俺に力をくれたのかが気になる。


「……すまない、私にはもう……時間が無い」

「は!?」

「許してくれ……いつかきっと…………その力が必要になる」

「何言って、おい、ちょっと待て!」

「いつか……その時まで…………」

「おい!待てって!おい!!」


 黒い光がパッと消えるとともに声が聞こえなくなる。

 訳が分からない。時間が無いとか、許してくれとか、この力が必要になるとか……俺じゃ何もわからない。


「なんだよ、いったい……なにが起きてるんだ」


 理由はわからない。が、一つ確かな事が言える。

 俺には力がある。闇の力と言う名のリングがある。


「さっきの凄かったねー」

「っ!!」


 背後からする声に振り向くと白い赤いサマーニットに白いスカートを履いた金髪ロングの赤い目をした少女がそこに居た。


「君に言ってるんだよ?暗黒戦士アスケードくん」


 異様な雰囲気を放ち近づいて来る少女に思わず後ずさりする。怪人と相対した時とは違う異様な怖さがある。

 それでも俺には聞きたいことがある。好奇心ではない。少女が言った言葉が気になったんだ。


「あんた……この力の事、知っているのか」

「この力って?」

「闇の力の事だよ、あんた今”アスケード”って言ったよな」


 先程、少女が言った言葉「暗黒戦士アスケード」その言葉は謎の声すら言っていなかったこの力の名前だ。

 謎の声が知っている事をこの少女は知っているかもしれない。


「・・・なーんだ何も知らないんだ、いいよ教えてあげる。その代わり私に協力してね」

「……断る」

「どうして?」


 理由はわからない。ただ、俺の人としての本能がコイツは危険だと言っている。人生経験の浅い俺にできるのは下手に動かないことだ。


 この力が何なのか、この少女が何者で何を知っているのか、それがわからない以上、適当な事を言って利用されないようにするのが最善だろう。

 それに、この少女が人間に成りすました怪人の可能性だってある。


「もしかして、疑ってるの?」

「言わなきゃ、わかんねえか」


 相手の挙動一つ一つに警戒する。この力を狙っている、そう思わずにはいられない程、今の状況は出来過ぎているからだ。


「そうだなー……んー、じゃあ私が爆裂戦隊幻の6人目だ、って言えば信じてもらえる?」

「爆裂戦隊、幻の6人目……だと」

「そう6人目」


 爆裂戦隊の構成は基本全部で5人だ。だが、10年前には6人いたとも言われている。これもあくまで噂話だ、本当に6人いたと言う話は公式には発表されていない情報だ。


(戦隊ミステリー三つ内の一つ、幻の6人目だと!ありえない、そんな噂話……!第一そんな事実があれば、公式が発表するはずだ!)


 志は徹底的に疑う。

 公式に出ていない6人目。噂話を鵜呑みにしたホラ吹きと見て間違いない。そう確信できる。


「嘘だな、6人目って言うなら公式がそれを発表するはずだ。それに、この状況は俺にとってあまりにも都合がよすぎる」

「……そうかもね、じゃあ変身しよっか」


 肩を落とした少女は腕に着いた黄金のリングを見せる。

 そして、反対の手でリングに触れて変身する。


「バクレツチェンジ」


 黄金の炎が舞い上がり、黄金の炎と共に黄金の鎧を身に纏った黄金の戦士が現れる。


「なっ……」

「バクレツゴールド、ね?信じてくれた?」


 目の前で変身した少女の姿に驚く。戦隊ミステリー、もとい噂話が本当だったとは思いもしなかった。


「あ、ああ、信じるとも」

「そう、それならよかった」


 変身を解き、少女がこちらに歩み寄ってくる。


「私は黄金 輝夜(こがね かぐや)よろしくね」

「……なんのつもりだ」

「なにが?」

「俺はまだ協力するとは言っていないぞ」


 少女、もとい輝夜の正体がわかった所で俺は協力するなど一言も言っていない。

 第一、この状況が作られたものだとするのなら、俺は戦隊側に不信感をもつ。


 人がいない状況、怪人の出現、謎の声と闇の力を持ったリング、爆裂戦隊の協力要請。全てがご都合主義すぎる。

 変わらぬ俺の意思に輝夜は困った顔をする。


「そっか……なら取り引きはどうかな?」

「取り引き、だと」

「そう!取り引き、戦隊の情報と君の知りたい情報をあげるから私に協力してほしいの」


 戦隊の情報と俺の知りたい情報。その提案事態はリスクを感じさせない至って問題のない提案だ。

 問題は……。


「何を協力すればいい」

「簡単な話、私の駒として動いてほしいんだ」

「……は?」


 唐突に突き出された内容に声が漏れる。駒?何を言っているんだコイツは、それじゃ提案の意味が無いだろ。


「ことわ――」

「戦隊は今、転換期にあるの」


 答える前に遮られる。


「長い歴史が紡がれてきた中で、ようやくその時が来た。私が表舞台に立てない理由も、君がその力に選ばれた理由も全部意味があるんだー。だからね……」


 輝夜の説明には意味不明な点がいくつかある。当然、俺は理解に苦しむ。長い歴史、表舞台に立てない理由、力に選ばれた、全ての疑問を問いただしたかった。

 それでも、その目はまっすぐ俺を見つめてこう言った。


「絶対後悔はさせない、だから私に協力して」


 訳の分からない状況で、俺はただ悔いのない選択をした。


「……わかった、協力しよう」

「ふふ、ありがとう」


 小さく笑う輝夜。

 これが闇の力アスケードと黄金 輝夜との不思議な出会いの始まりだった。

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