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暗黒戦士アスケード  作者: ミミササ
第一章 暗黒戦士編
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ep.2 闇の力

 ゴールデンウィーク開け、平日の午前11時。学校に遅刻していると言うのに、俺はゆっくりと歩きながらマンションを出る。

 スマホに電源を入れると幼馴染から数件ラインが届いているが電源を落とす。

 どうせ、学校に来ていないことについてだろう。いつもの事だ。


 そんなことよりも志が気になっているのは昨日の事だ。

 焔がバクレツレッドに選ばれた。それに対する俺の劣等感は昨日から増すばかり、学校についても話題は焔の事でもちきりだろう。


(焔は今頃、戦隊任命式か……)


 戦隊になれば当然学業なんかに力が入らなくなるほどの忙しさになる。その為、戦隊に選ばれた者は特別免除をしてもらえる。


(しばらくは顔も合わせることもない……か)


 今の状態で、昨日の今日で顔を合わせるのはキツイ。

 合わなくて済むのならむしろいい方だ。


「……サボるか」


 だからと言って学校に行くのかと問われれば答えはNo。

 昨日の検査を受けられたのは学校でも俺と焔だけ、もし学校に行けば昨日の事を根掘り葉掘り聞かれるのは間違いない。

 ならここはサボるのが鉄柵だ。


 河川敷を歩く足を止め、スマホを取り出そうと視線を落とす。


「マジかよ……」


 河川敷の橋の下。丁度、影に位置する場所に人影が見える。

 だが、明らかに人ではない。黄色い毛並みに狐の仮面をつけた怪人だ。


 川の水を眺めていた怪人はゆっくりと立ち上がる。

 手には子供らしい遺体の頭部を握っており、視線に気が付いたのかこちらに振り向く。


「なんでここに怪人がいんだよ……!」


 周囲を見回し、助けを求めようにも、幸いと言うべきか人はいない。

 第一発見者は俺。


「誰もいない……なら!」


 ポケットからスマホを取り出し、緊急通報を開こうと電源を入れる。

 怪人との距離は最低でも10メートル以上は離れている。これなら、すぐには攻撃できないはずだ。


「っ!?」


 電源を入れた瞬間、一気に距離を詰めた怪人の蹴りで体が宙に舞う。

 俺はこの時、一つ考えを改めさせられた。怪人は人間とは違う、人外の存在なんだと。


「ぼぉへっ……!」


 今朝食べたラーメンが異を逆流しながら喉元まで迫る感覚と全身を地面に激しく打ち付けられながら数メートル程、吹っ飛んでいく。


「お前見たな?俺は怪人キツ・ネックス!ゴクアクの怪人だ!俺の悪事を見られたからに仕方ない、戦隊が来る前に始末させてもらう」


 意気揚々と自己紹介をした怪人は戦隊と戦う前に志を抹殺しようと近づいて来る。


(痛い、なんだ今のは……怖い…………)


 全身をむち打った俺はなんとか体を起こす。

 目の前には怪人がいる。忘れることはなかった復讐心。その仇が今、目の前にいると言うのに体は怖くて動けないでいる。


(これが怪人…………)


 昔、家族を殺されたとき、あの時とは比較にもならない恐怖が襲う。


「俺じゃ……勝てない……」


 蹴り飛ばされた衝撃で飛んでいったスマホを見つけ、すぐさま通報しようと手を伸ばす。


『志!』


 助けを求める手が止まる。


『もし、俺達のどっちかが戦隊になれなかったとしても恨みっこなしだぜ!』


 親友と、焔と躱した約束を思い出す。

 あの日、検査のテストを受ける日。焔が言った言葉が今になって思い出す。


 例え、どっちかが戦隊になれなかったとしても、俺達は親友だ。忘れはしない、そして変わりもしない約束。


「なんで……っ!今なんだよ!」


 震える体を気合で動かし、怪人に向かい戦闘態勢に入る。


「なんだ?お前、もしかして……戦えると思っているのか?」

(ごめん、焔……俺、約束破るよ)


 なりたかった者、なれなかった者。

 俺はバクレツリングに選ばれたかった。その力でゴクアクに復讐して、この行き場のない気持ちをぶつけるつもりだった。


 でも俺はなれなかった。そんな自分に情けなくなって失望して、焔を羨ましがった!それでもやっぱり、諦めきれねえよ……!。


「ああ!そうだよ!」


 望月志は負け犬だ。

 無謀にも人間の身でありながら怪人に立ち向かう。その心は復讐心と自身への情けなさが入り混じった、負け犬とも言える勇気を持っている。


「死んでも悔いはねえ!俺は……!」


 怪人に立ち向かったその時、一筋の黒い光が天から目の前に差し込む。


「――力が欲しいか?」


 志の勇気に反応するかのように声が聞こえる。それと同時に世界から音が消え、動きが止まる。


「だ、誰だ!怪人か!」

「そうだ、力が欲しいか?」


 志の問いに声が反応する。


「闇の力だ、欲しいか?」

「闇の力……?」


 突然の出来事に理解が追い付かない志とは対照的に声は冷静に答えを求める。


「お前は今、力を欲している」

「っ!?」


 声に不意を突かれる、図星だ。

 志は今、怪人と相対している。そしてここに人は一人しかいない。当然、通報も出来ていない為、戦隊も来ない。


(今、俺の状況はこの謎の声の怪人に支配されている……なら)

「……力が欲しい」

「闇の力でもか?」

「どいう言う事だ」

「……詳しくは言えない」


 闇の力。その問いに志は疑念を抱く。

 突然の現象に謎の声、志はそれを知るすべを持ち合わせていない。

 故にできることは一つ。


「それでも……力が欲しい、ゴクアクに復讐できるだけの力が!」


 後戻りはできない。志に残された選択肢は前進か停滞か。


「いいだろう」


 その言葉と共に両腕に黒い光が現れ、黒いリングが装着される。

 止まっていた音や動きがゆっくりと元に戻り始める。


「なんだ、その両腕のリングは?」


 動き出した時の中でネックスはさっきまで着けていなかったリングに目が留まる。


「力だよ。お前たちゴクアクを倒す、俺の力だ!」


 両腕に付けたリングを重ね合わせる。


「さあ、変身だ」


 謎の声が頭の中で響く。


「「暗黒チェンジ!」」

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