ep.1 戦隊不適合
5月初旬。ゴールデンウィーク最終日、俺はとある会場に来ていた。
会場には同じ目的の奴らが世界中から数百人が集まっている。戦隊適合検査。それがこの会場に来た理由だ。
爆裂戦隊。それは10年前、突如地球に進行してきた宇宙犯罪組織ゴクアク。それと同時に現れた力、バクレツリングに選ばれた5人の戦士の事を言う。
10年の時を経て、今日。爆裂戦隊の世代交代が行われる。
「ただいまより、バクレツリングの適合検査を実施します」
スタッフの掛け声と同時に次々と検査を受ける列が進んで行く。
先頭の列から順に早い者から検査を受ける。結果がどうあれ、早く検査が終われば後ろに並んでいる者は検査を受けられない。
所謂、早い者勝ちと言うやつだ。
元々は数万人いたのだが、この検査を受けるにはいくつかのテストを受けなければならない。体力テスト、倫理テスト等々、そこでふるいにかけられ、基準に満たなければ落とされる。当然のことだ。
なにせ、人とは違う化け物と戦うんだ。最低限の能力が無ければ戦隊としてやっていけないだろう。
「16番 望月 志さん」
名前を呼ばれ前へ出る。
目の前には一つのオレンジのリングがある。バクレツリングだ。
リングを手に取る。期待を胸に、戦隊でおなじみの変身する掛け声を言う。
「バクレツチェンジ!」
・・・・・・
なにも起こらない。これが意味する結果は不適合。
俺はバクレツリングに選ばれなかったと言う事だ。
§ § §
「ダメだったか……」
会場の出口にしゃがみ込んで親友を待つ。
適合検査を受けに来たのは俺だけじゃない。親友の赤日野 焔も検査を受けている。今はその親友を待っている。
(今、適合しているのはレッド以外の4人……か)
俺のすぐ後に受けた4人が連続して戦隊に適合していた。
鬱々とした気分を前に天気は晴れ渡っている。
俺が戦隊になりたかったのには理由がある。それはここに集まった人達と大差ない程の単純な理由だ。
復讐したい。10年前、俺から家族を奪ったゴクアクに復讐がしたい。ただそれだけだ。
10年前の地球進行で家族や故郷を失った人は多い。だから、ここに集まっている。戦隊と言う名の復讐の力を手に入れるため、適合検査を受けに来た。
でなければ、こんな危険な仕事、誰も受けたくはないだろう。
(……まあ、ぶっちゃけ?怪人と戦ってくれて俺の代わりに復讐してくれるなら誰だっていいしな)
心の中で言い訳を始める。
現実と言うのは残酷だ。俺の結果は不適合、バクレツリングに選ばれなかった。
(あんな強い怪人と戦うなんて嫌だし)
誰に聞かせるでもなく、必死に言い訳する。
(戦隊になって命張る方が馬鹿らしいし、死なずに済むって考えれば……)
少しづつ、顔が歪んでいく。人の心と言うのは脆い。
どれだけ言い訳を考えようとも、ここへ来た意味が全ての答えだと言うのに、俺は逃げようとしている。
頭の中に浮かぶのは優しかった両親との思い出、それはここに来た意味でもある。
怪人を倒してくれるのなら誰でもいい、それは戦隊になれなかった本心から出た言葉なのかもしれない。
それでも、やっぱり……。
「……なりたかったなー」
俯き、静かに涙を流す。
俺は戦隊になれなかった。それはきっと復讐に取り付かれた醜い心が、その結果を導き出したんだろう。
「203番 赤日野 焔さん」
スタッフの声が聞こえ、涙をぬぐう。焔の番だ。
出口から会場を覗き込む。焔がバクレツリングを装着し、戦隊特有の掛け声を発する。
「バクレツチェンジ!」
赤い炎が舞い上がり、炎と共に紅蓮の鎧を身に纏ったバクレツレッドが現れる。
変身は成功、赤日野 焔はバクレツリングに選ばれた。
「なんで……」
咄嗟に出た言葉をかき消すかのように会場がお祝いムードへと切り替わる。
拍手喝采の嵐に見舞われ、焔は変身を解く。
最後の戦士が選ばれた。つまり、もう適合検査をする必要はないのだ。後ろに並んでいた人達が悔しそうに拍手を送り、俺と同じく不適合だった者達は心ここにあらずと言った感じで拍手を送る。
そんなことは知らずに、焔は照れくさそうにしていると、他の適合者が絡みに行く。
「貴方が僕たちのリーダーですか」
「リーダー?俺がか?」
青髪の眼鏡をかけた青年が呆れまじりに説明をする。
「そうですよ、先代もそうでしたがレッドはリーダーと言う固定観念があるので、貴方がリーダーです」
「そうなのか、じゃあこれからよろしくな!俺は赤日野 焔!」
「僕は青海 流」
「ボクは――」
元気よく自己紹介を始め、新戦隊同士で意気投合する中、志は呆然とその光景を眺めていた。
(俺じゃなくて、焔がバクレツリングに……なんで、俺には何の反応もなかったのに…………)
「志!」
俺に気付いた焔が駆け寄ってくる。やめろ、そんな笑顔で来るな……。
握りこぶしに力を込め、悔しさを我慢する。
「志!あのな!俺、俺……!」
近づいてきた焔は、照れくさそうに何か言葉を待っている様子だ。
なにか言ってほしいのだろう。ここまで一緒に頑張って来た仲だ、親友として言葉を掛けるのが自然だ。
抑えきれない悔しさを滲ませながらも応援の言葉を贈る。
「焔、戦隊適合おめでとう」
「志!ありがとう!お前がいてくれたからだよ!」
無邪気な笑顔で感謝を述べる焔に少しだけ、苛立ちを感じる。
悔しい…‥バクレツリングに選ばれなかった事実もそうだが、高校に入って初めてできた親友の焔に苛立ちを覚える自分自身が情けなくて……。
その気持ちを誤魔化す為、焔に思いを託そう。
「俺の……」
息をのむ。ダメだ、俺はまだ……この気持ちを託すだけの納得ができていない。
俺じゃなく、焔が選ばれた事実に整理がついていない。
見下してたわけじゃない。ただ、一緒に居てほしかった。
それでも、俺はこの気持ちに嘘がつけない。だから……。
「俺の分まで頑張ってくれ!」
取り繕った笑顔に本心を伝える。
どれだけ嘆いたって俺がバクレツリングに選ばれなかった事実は変わらない。
焔に対する劣等感を感じつつ、発した思い。
それに焔は純粋に答えてくれる。
「ああ!皆の分まで俺が頑張るよ!」
その答えに俺は納得してしまった。
バクレツリングに選ばれなかった理由が、俺じゃなく焔が選ばれた理由が……眩しすぎて、俺は……戦隊不適合だ。




